コミュニケーション

【図解版】交渉とは?5つのポイントとコミュニケーション交渉術入門

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交渉なんてハードルが高いのでは?
自分とは遠い世界では?
そう思う方も多いかもしれません。

スマートに商談をまとめたり、ドラマのようにライバル会社と競い合って成約を取り付けたり、
会社やチームのピンチに颯爽と交渉のテーブルを任される・・・。

交渉のスキルを持ち合わせ、こんな風に様々なシーンで有利に物事を動かすことができたら、もっと仕事の幅も広がり、あなたへの評価も上がるはずだと思いませんか?

交渉というと、映画やドラマの影響もあって、壮大な交渉のシーンをイメージしがちですが、
実は、交渉は私たちの身の回りに溢れています。

そこでこの記事では、これだけ知っておけば、日々の仕事がうまく行くようになる。
そんな交渉の『入門編』をご紹介します。

監修:日本コミュニケーション能力認定協会

コミュニケーションの専門機関として “満足度99.3%” の『コミュニケーション能力認定講座』を開催。日本教育推進財団が監修し、19万人の指導実績に基づくコミュニケーション・カリキュラムは、信頼の獲得・リーダーシップの発揮・営業や交渉での成功・人間関係の構築に効果的。メディアからも注目されている。

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1.交渉とは?世の中は交渉で動いている!

交渉とは、違う立場や役割、利害関係にある双方が、共に納得できるゴールを目指して話し合うことです。あるいは、一方が譲歩したり損失を被るケースもあります。

そして交渉術とは、交渉をうまく運ぶためのコミュニケーションスキルです。

交渉というと、映画やドラマのシーンみたいに、社運をかけた交渉だとか、犯人との交渉みたいな「大ごと」のイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。

実は交渉というのは、日常生活の中に溢れかえっています。
例えば、あなたもこんな風に思ったり、実際にやり取りをした経験がありませんか?

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何気ない交渉をはじめ、人を動かすにも、プロジェクトの遂行も、政治の世界にも・・・
物事が進んだり、動く時や変わる時には、ほぼすべて交渉があると言っても過言ではありません。

交渉とは、困難な状況から光を見出すことでもあり、それ次第で、関わる誰しもにとって利益や繁栄をもたらすことができる方法です。

交渉の力を磨けば磨くほど、あなた自身も、あなたの周囲の人たちも幸せな結果をもたらすことができるのです。

1-1.【図解】でわかる交渉のいろいろ

交渉とはどのようなものか?

その難易度やテーマの大きさ(影響の大きさ)によって、交渉に関わる人の数や、交渉のプロセスも詳細になります。
交渉の方向性によっては各所で行われる駆け引きや、いわゆる「交渉術」と言われるテクニックも枝葉となって増えていきます。

そこで、まずは交渉にはどのような種類があるのかを見ていきましょう。

1-1-1.交渉の種類は?

配分型交渉

主に、利益(メリット)が1種類しかない場合に起こりがちな、利益を奪い合う交渉です。

土地の権利を争う、値引きのみにフォーカスした交渉など・・・
勝ち負けや、一方が得をした分だけ一方が損をする結果になりやすく、長いスパンで見ると交渉する双方の関係性を壊しかねません。

A(あなた):欲しいパソコンがあります。価格は25万円。しかし予算は20万円です。
B(店員):Aが検討しているパソコンを20万以下で販売しては、利益が出ません。

A:なんとか22万円まで値引きできないかと交渉します。
B:最大限の利益を出すためには23万円までの値引きが限界です。

この場合、交渉によって「5万円」の利益の中で、どちらかが同じ金額分だけ得をするか、損をするかに分かれます。
一定の利益(メリット)を配分することになるため「配分型」と言われます。

この頃はビジネスシーンでは配分型交渉の考え方ではなく、次にご紹介する「統合型交渉」が主流になってきているとも言われます。

統合型交渉

利益(メリット)を増やす、加えるなどすることで、お互いに損をすることがなく、どちらも利益を獲得できる結果を目指していく交渉です。
「WIN-WINの交渉」とも言われます。

A(あなた):欲しいパソコンがあります。価格は25万円。しかし予算は20万円です。
B(店員):Aが検討しているパソコンを20万以下で販売しては、利益が出ません。

そこで先ほどの「配分型交渉」から脱却するために、交渉で得られる幅や、焦点を広げてお互いに得る利益を最大化します。

B:値引きの代わりに、1万円分のポイントと、無償の3年間の修理保証、インターネット接続の半年無料サービスを付与する提案をします。
A:値引きではないが、トータルしてほぼ同等の価値を手に入れることになります。

配分型交渉が、自分の利幅を最大限に増やすことにフォーカスするのに対して、統合型交渉は、お互いの利益をいかに増やせるかにフォーカスします。
そのため複雑でもあり、交渉人のスキルはもちろん、分析、計画の精度が問われます。

この記事においても、推奨するのは「統合型」「win-winの交渉術」です。

人間関係、ビジネス関係など、様々な背景がある中で、信頼関係のもとに双方にとってもっとも良い結果を導きだす交渉は理想的です。

そして、統合型(win-win)の交渉を成立させるには、ビジネスの全体像の把握や先の見通しも必須です。
双方のメリットとなる様々なアイディアを出すには、相手の視点で捉えることも欠かせません。
総合的に、難易度の高い交渉だと言えるでしょう。

1-1-2.交渉のプロセスは?

「交渉」には、一連のプロセスがあって大きくは3段階があります。
分析、計画、交渉(実践)です。

交渉とはその場限りのコミュニケーションと思われがちですが、事前の情報収集や綿密な計画が欠かせません。

どれだけお互いの「合意可能領域(ZOPA)」を広げることができるか?
そしてお互いの利益の最大値を総合的に生み出して行く上で、交渉の前段階は大きく結果に影響していきます。

1-1-3.交渉の難易度は?

これから交渉術を学んで交渉力を磨いていく方にとっては、難易度を知ることも大切です。
そこで5段階の難易度を設定しました。

レベルアップするほど、あなたが得られる利益も、周囲にもたらすことができるメリットも大きくなるのです。ぜひ参考に上を目指してください。

●白帯レベル・・・
日常のアポイントやデートの約束を取り付けること、優遇してもらうことなど。
たとえ仙人レベルの人であっても、日々こうした交渉ごとは溢れています。誰もが日常的に行うレベルです。
●茶帯レベル・・・
ビジネスシーンでの条件交渉、値引き・値上げ交渉など、社会人3年目にもなれば日常的に行われるレベルです。
●黒帯レベル・・・
新規の取引成立や、銀行融資を引き出す交渉など、社長や役員、幹部が動くレベルです。
●達人レベル・・・
社運をかけた超難関の交渉を行う領域です。
何度となくやってくる大ピンチも乗り越える、TVドラマの半沢直樹みたいなレベルです。
●仙人レベル・・・
もはや神がかり的な交渉を行う領域です。
歴史上の人物で言えば、国の歴史を動かした坂本龍馬や、市場に大きく影響を与えたスティーブ・ジョブズなど。

ピラミッドのレベルが上に行くほど、

  • その交渉の先にある「ゴール」(結果・利益)
  • 交渉によって起こる「影響」(動く人の多さや動く金額)
  • 交渉に臨む人間の「使命感」

こうしたものが大きくなっていきます。

交渉とは決してスキルだけではありません。
その背負う責任や想い、目的といった、そもそもあなたがなぜ交渉をするのか?
という根底にあるものが結果を左右するのです。
スキルはそれを補強してくれる役割です。

それでは次に、交渉・交渉術を学ぶ上で、大事な心得から押さえて行きましょう。

2.交渉で心得ておくべき5つのポイント

交渉に臨むにあたって、どのようなスキルを使おうとも決して忘れてはならないのが、この5つのポイント。交渉のスタンス(姿勢)と言うべきものです。

2-1.勝ち負けじゃない!今の時代はWin-winを目指そう

交渉にあたり、その方向性を決める大事な考え方:
「人間関係の6つのパラダイム(人間関係の規範になる考え方)」をご紹介します。

  1. Win-Win:自分も勝ち、相手も勝つ。それぞれの当事者が欲しい結果を得ること
  2. Win-Lose:自分が勝ち、相手は負ける。相手を蹴落としてなんぼの世界
  3. Lose-Win:自分が負けて相手が勝つ。相手が幸せになるならば、自分は常に踏み台でかまわない
  4. Lose-Lose:相手が負けて自分も負ける。相手に勝たせるくらいなら足を引っ張って共倒れしたほうがマシ
  5. Win:自分の勝ちだけを考える。自分が勝てば相手がどうなろうと知ったことではない
  6. Win-Win または No Deal:Win-Winの合意、または取引条件に至らなければ、取引しないことに合意する。妥協するくらいなら白紙に戻す

(Franklin planner7つの習慣サイトより引用)

交渉とは、相手に打ち勝つことや、自分の要求を飲ませることのように捉える方もいますが、それはあくまで刑事ドラマや映画の世界のような、特定の状況に限ります。

今やビジネスシーンでの最先端の交渉によって目指すものは、このパラダイムの1つ目の「Win-Win」。自分も相手もどちらも勝つこと。
つまりどちらにとってもメリットがある関係や結果のことです。

ビジネスでは損得が生まれやすいものですが、「Win-Lose」「Lose-Win」のように、どちらか一方が勝ち、一方が負けるといった交渉では、ビジネスが成立しないどころか、信頼関係が壊れるのが明らかですよね。

ユダヤ人初の米国最高裁判所判事 ルイス・D・ブランダイスの言葉です。

「古いタイプのよい取引とは、一方の側が片方よりよい方を取るものだった。
新しいタイプのよい契約とは、両方の側にとってよい結果になるものである。」

お互いの利益を考えた到達点を探し続けることが、今の時代の大切な交渉と心得ましょう。

2-2.信頼を得ることから始めよう

ビジネスの基盤でもあり、すべてのコミュニケーションにおいても鍵になるのが「信頼関係」です。

交渉は、双方が立場や置かれている状況、考えがまったく違うところからスタートします。
そこから双方にとってメリットのある結論を導き出すには、お互いが相手の話に聞く耳を持ち、理解する姿勢がなければ始まりません。

相手と信頼を築けるかが結果を左右します。

交渉において信頼を得るためには、いくつかの要素があります。

●見た目や立ち居振る舞い

多くの人が、「警官」=厳格さや権威、「医者」=知的などの印象を持っています。

そして本当に警官かはわからないのに、私たちにはその制服を着ているだけでその相手を信用し、厳格さや権威を感じてしまうという心理効果があります。

第一印象は、相手が「この人は信頼できる・できない」を無意識に判断する大きな要因です。
どのような姿、振る舞いが相応しいか。交渉は第一印象から始まっていると心得て準備しておきましょう。

●相手への敬意や尊重

明らかに「自分有利に進めよう」という意気込みで臨む相手と、あなたの考えや利益も尊重しますよ、話し合う姿勢がありますよと示してくる相手。

どちらがスムーズに交渉に臨めるでしょうか。

あなたが交渉で得たい結果を作るには、相手の譲歩や相手からの理解がなくては実現しません。
ですから、まずは自分から「あなた(相手)の考えも聞かせてください」という姿勢を示す必要があります。

2-3.代替案・選択肢を準備しよう

難しい交渉になればなるほど、どちらかの提案や利益がそのまま通るというケースはほぼありません。
最も得たい結果に近づくために、様々な展開を想定して、先の手を準備しておくことです。

将棋の世界には、「三手の読み」という基本があると言います。

  1. 将棋の駒を1つ動かす
  2. 相手がその手に反応して打つ
  3. さらにその手に対して自分がどう打つか

このように三手先までをシュミレーションすること。
交渉においても同様に、相手の出方や提案、それへの対策、代替案などを様々な視点から想定し、準備をしておくことが目指すゴールに向けての達成の可能性を高めてくれます。

そしてシュミレーションする際には、合意できる範囲と、限界ラインはどこかの判断基準を明確にしておきましょう。
譲歩をしていくうちに、いつの間にか不利益な交渉が成立してしまっていた・・・ということが起こり得ます。
交渉の用語では「BATNA」・「ZOPA」と言われます。

●BATNA(最も良い選択肢:Best Alternative To a Negotiated Agreement)

この交渉が成立しない場合の担保、交渉でこれ以上譲歩できない限界を決める基準です。

例えば、あなた(Aさん)は家電製品を購入しようとしています。
事前に情報収集をして、C店ではあなたの欲しい商品を23万円で販売しているという情報を入手しました。

最安値の23万円で購入できることが確定している。これがBATNAです。
すると、23万円以下で購入できるかが、あなたのB店での交渉のラインです。

一方のB店の値引きの限界ラインは20万円です。
これ以上の値引きは赤字になるため、不成立とするか代替案を提示するなどを判断します。

●ZOPA(合意可能領域:Zone Of Possible Agreement)

ZOPAとは、お互いが合意できる、交渉成立条件の範囲のこと。
言い換えれば、この領域内で条件がまとまれば、お互いに損をすることはない、というラインです。

あなた(Aさん)は23万円で購入できるというBATNAを準備しています。

一方、B店のBATNAは20万円なので、最大3万円分の値引きか、ポイントや保証などの付加価値を提示しても、交渉成立して損はないと判断できます。

この20万円から23万円の範囲がZOPAです。ZOPAの範囲が広いほど、交渉成立の可能性を広げることができます。

2-4.交渉の「肝」、人間心理を理解しよう

交渉は心理戦とも言われます。
交渉術を学んで、そのスキルを磨くほど、私たちは確かに人を操るようなことも可能になります。

とはいえ、言葉巧みに人を操作したり、こちらの欲求を無理にのませる詐欺まがいのことをするのではありません。

交渉において、心理に働きかけるスキルを使う理由は大きくはこの2つです。

1.相手の信頼を得るため(警戒心を解くこと)

そもそも交渉は、お互いの求める利益や主張が違うところからのスタートですから、相手も警戒心を持って臨んできます。その警戒心を解いて信頼を得ていかなければ交渉は始まりません。

いかに早く、相手から信頼を得ることができるかは、目の前の相手の心理状態を読み取ることと、信頼を積み重ねるためのスキルが功を奏します。

2.その判断が素晴らしいものだったと納得してもらうため

相手の合意を得るには、相手にとって最も重要な要求(条件)が満たされているかが大きく影響します。
相手にとって最大限のメリットは何か、判断に至る基準はどのくらいかを引き出していくコミュニケーションスキルを押さえておく必要があります。

デール・カーネギー(米国の実業家、作家)の言葉にこうあります。

「相手を重要人物として扱い、誠意を持って協力を要請すれば敵対者もまた友人にすることができる。」

心理に影響を与えるような強い力を持つ交渉人は、交渉相手を敵とみなして戦いに臨むのでなく、より大きな利益に到達するための協力者を口説くつもりで望みましょう。

2-5.ガンジーに学ぶ!複数の視点を活用しよう

複数の視点を持つとは、自分の視点だけでなく、交渉相手の視点や、交渉によってもたらされる影響を想定する、客観的な視点で捉えることです。

インド独立の父、マハトマ・ガンジーがイギリスからの独立交渉に向けて、こんな準備をしたというエピソードがあります。

  • 自分の主張
  • 交渉相手であるイギリス側の主張
  • 世界から見た、インドとイギリスの関係

この3つの視点から、それぞれの主張や交渉によるメリットデメリットを、時には交渉相手であるイギリスの交渉人の声や姿勢、話し方まで真似をして、その人に成り切って考えたといわれます。

例えばビジネスシーンであれば、交渉相手だけでなく、その先の市場全体に与える影響を考えてみる。
より大きな利益や長期的な利益を見出すためにも、この複数の視点を使うことが役立ちます。

複数の視点を使いこなすには・・・

物事を複数の視点から捉えるためには、心理学NLPの「ポジション・チェンジ」の概念と手法が役立ちます。

セラピーには、2つの椅子を使って、自分と相手の2者の視点から問題解決を行なっていくという手法があります。

そこにもう1つ、「第三者の視点」を加えて、より多角的に物事を見極めたり、問題解決の方法を探っていく発展系がNLPのポジション・チェンジという手法です。

この手法の特徴は

実際に3者の位置(第1~第3ポジション)を準備し、順番に体を3つの位置に動かして、思考や対話を行うこと。そして相手や第3者の気持ちや立場、視点に実際になりきってみることです。

相手の立場から相手にとっての交渉相手である自分を見つめる。
第三者から、交渉の両者を客観的に見つめる。

この位置の切り替えによって、頭の中だけで相手の思考を想定するのとは全く違う、新たな視点や思考を得ることができます。

交渉以外にも、この手法は応用範囲が広く、様々な人間関係の改善、相手への理解を深めることに役立ちます。

例えば、部下を持って初めて上司の大変さがわかる。
子どもを持って、初めて親のありがたみがわかる・・・など。

私たちは、実際に自分がその立場を経験して初めて気づくことがたくさんあります。
ポジション・チェンジは、その実体験で得られる気づきの「予習」になるでしょう。

ポジション・チェンジをもっと詳しく知りたい!手順を知って自分で試してみたい方は
こちらの記事も参考にしてください。
⇒ ポジション・チェンジとは?「仕事や人間関係」の悩みを解決する手法

3.交渉力を磨く!5つのコミュニケーション法

交渉シーンでは、交渉の場における信頼構築や、駆け引きなどの心理戦、相手の考えや譲歩を引き出すことなど、コミュニケーションの手腕が書かせません。

こうしたコミュニケーションの戦略と積み重ね、当然そのスキルの高さによって交渉をWIN-WINに導くことができます。

この章では、これだけは押さえておきたい、交渉に必須のコミュニケーション手法をご紹介します。

『お小遣いアップ!』
『ちょっと値引きして!』

そんな日常に溢れるシーンにも使える方法です。
ぜひ実践をしながら腕を磨いて行きましょう。

3-1.ラポールを築くための超基本「ペーシング」

心理学の用語でいう「ラポール」とは、「クライアントとの信頼関係」のことを意味します。
交渉を始め、ビジネスにおいては全ての土台となるのが信頼関係。
それをより早く、強固にするための手法が「ラポールスキル」です。

交渉やセールス、マーケティングなどに携わる方にとって、「ラポール」は多くの書籍などでも紹介されるようになり、ラポールを築く能力は、すでになくてはならないものになってきています。

ラポールスキルの中でも、常に実践できるようにしておきたいのが、ペーシングのスキル。
一言で言うと、相手と「合わせる」スキルです。

ペーシングとは・・・

  1. ミラーリングと言われる
    鏡のように相手と動作、ジェスチャー、姿勢、表情などを合わせるスキル
  2. マッチングと言われる
    話すスピード、声のトーン、声の大きさ、呼吸などを合わせるスキル

人間には(動物にも)、自分と似たものや同じものに対して安心感を持つ、類似性の法則が働くとされます。動物の世界では、同じ種族で共に行動するものが多くいますし、異質なものを排除しようとする本能が働きます。

私たち人間も同じです。
例えばあなたも海外で日本人に出会うと親近感を強く感じた経験はありませんか?
あるいは、同じスポーツチームのファンだと知って意気投合したり・・・。

信頼が築かれている人たちには、『共通点』が多くあります。

ラポールスキルは、動作や言葉などを合わせて共通点を作り出していくことで、すでに信頼が築かれている状態を作り、心理的な安心感を生み出していく強力な方法です。

ペーシングのポイント

交渉の経験があれば、ペーシングをすでに知っている場合もあります。
そうした相手にあからさまにミラーリングやマッチングを行っては、返って逆効果になることもあります。試していく上では、まずは自然に行いやすい「呼吸」から始めてみましょう。

呼吸のタイミングの見極めは、相手が話しているときが、息を吐いている時です。
それに呼吸を合わせていくことで、自然と話のスピードや間の置き方なども合わせやすくなります。

3-2.相手の心理状況を読み取る「キャリブレーション」

キャリブレーションとは・・・

観察することです。
私たちがコミュニケーションを行う時には、言葉だけでなく非言語といわれる言葉以外の要素でも、多くのメッセージを発信しています。

人類言語学者のレイ・バードウィステルの研究によると、人は1日に言葉を発する時間はわずか10〜11分に過ぎず、一つの文を話すのに、たった2.5秒しかかけていない。
ところが、顔の表情は1日に25万回も認識しているとのこと。

そして人が対面しながら会話する時、言葉が占める割合は35%に満たず、残りの65%は言葉以外のコミュニケーション(非言語)に頼っていると計算したそうです。
(参考『本音は顔に書いてある』アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ著)

目は口ほどに物を言う、ということわざにもあるように、例えば、表情や身振り手振り、声の大きさなどには私たちの心理状態(感情など)が現れているのです。

キャリブレーションスキルを磨いていくと、ペーシングのスキルも上達する上、言葉と相手の考えが一致しているかどうか、今の心理状態がどのようなものか・・・
こうした傾向が掴みやすくなります。

これは、私たちの心理状態を表す非言語の傾向です。

非言語と心理状態は、個人差(性別差も)があり、ジェスチャーの意味には文化によって違いもあります。

ですから、相手の心理状態と非言語の傾向を知るためには、何度か同じような状況をキャリブレーションしていくと良いでしょう。

キャリブレーションの活用法

キャリブレーションは交渉以外にも、たくさんの場面でコミュニケーションに活かすことができます。

例えば、まるでドラマのようなこんなシーン。

あなたは旦那さんが何か隠し事をしているな、と勘づいたとしましょう。
まずは、あなたも知っている「正解」の質問を投げかけて、旦那さんの「YES」の時の目線の動きやジェスチャーなどの反応を確認します。

いくつかそれを行った後に、あなたが知らず、旦那さんが隠しているだろうことを聞いてみます。
その時の反応が、「YES」の時の反応と違う場合には、何か後ろめたいことがあるかもしれません。

「確か、出張は今週末だったわよね?」(あなたも知っている正解)

『そうそう』(YES)

「今日は遅くなるんだっけ?」(あなたも知っている正解)

『うん。22時くらいになるかな。送別会があるから。』(YES)

「昨日は誰と飲んでたの?」(あなたが知りたいこと)

『昨日は、えっと●●部長と2人で飲んでたよ。』(→ここの反応をチェックします)

こんな風に使うこともできますよね。

相手との関係性によりけりですから、どんなシーンで使うかは大人の判断にお任せします。
使うときには、相手に「試されている」「信用されていないのでは?」という不快感を与えない程度に気をつけましょう!

キャリブレーションスキルを高めるトレーニング

どのような心理状態の時に、どのような反応をするか?を、自分で表現してみることも有効です。

  • 焦っている時の表情、口調は?
  • リラックスしている時の表情や姿勢は?
  • 有利に立っている時の姿勢や目線は?
  • バレては困ることを聞かれた時の反応は?
  • 相手に好意を示したい時のジェスチャーは?
  • 相手に敵意を示したい時の表情や口調は?

例えばこうした心理状況で、自分や人がどのような反応を示すかを日頃から観察したり、自分で演じてみましょう。

3-3.万能コミュニケーション「DESC法」

交渉をWin-winに運ぶには、アサーションというコミュニケーションスキルが役立ちます。

アサーションとは・・・

自分の考えや感情を押さえつける「消極的(非主張的)」なコミュニケーション。
相手を論破したり自分の主張を押し通す「攻撃的(主張的)」なコミュニケーション。

そのどちらでもなく、お互いを尊重する「アサーティブ(win-win)」のコミュニケーションスタイルを理想として、それを身につけていくという考え方であり、コミュニケーションの方法です。

アサーションの手法には「DSEC法」というコミュニケーションのパターン(型)があります。

例えば、日常的によくある職場のシーン。

職場の先輩が、あなたに急な仕事を頼んできたとします。
しかしあなたは今たくさんの仕事を抱えていて、それをすぐにでも終わらせなければなりません。

それぞれが、「消極的」「攻撃的」なスタイルなコミュニケーションを行った場合のやり取りは、このようにこじれてしまう可能性があります。

あなた先輩
消極的はい・・・わかりました。
(本当は断りたいのに・・・)
ありがとう。よろしくね!
攻撃的私の状況もわかってください!
いつもどうして急に無理なことばかりおっしゃるんですか!?
急な仕事は引き受けて当然だろ!
もういいよ、頼まないよ。

一方で、アサーティブなコミュニケーションを行うと、お互いが冷静に、相手の状況や気持ちを尊重したやり取りができるようになります。

あなた先輩
アサーティブ実は今、私もすぐに終わらせる必要のある仕事を複数抱えています。
先輩の大変な状況もよくわかりますので、お手伝いしたいところなのですが。
最短で明日の午後からでしたら対応することができますが、それでもよろしいでしょうか。
もしくは、他に対応できる者を探しましょうか。
そういう状況なら仕方ないよ。他に頼める人がいないか自分で探してみるよ。ありがとう。

それでは、このアサーティブなコミュニケーションを取るための「DESC法」をご紹介します。
基本の型として、以下の4つの順に自分の主張を行う方法です。

(1)事実を伝える(Describe)自分の状況や相手の状況、事実を伝える「実は今、私もすぐに終わらせる必要のある仕事を複数抱えています。」
(2)表現する(Explain)自分の気持ちや相手の気持ちを尊重して伝える「先輩の大変な状況もよくわかりますので、お手伝いしたいところなのですが。」
(3)提案・お願いをする(Specify)提案や相手へ望むことを具体的につたえる「最短で明日の午後からでしたら対応することができますが、それでもよろしいでしょうか。」
(4)結果を示唆する・選択する(Choose)選択肢を示す。または相手の回答によって代替案を伝える「もしくは、他に対応できる者を探しましょうか。」

交渉ごとに関わらず、仕事では様々な人間関係や利害関係、立場の違いがあります。
複雑で、そしてその関係性をより良い状態に保ちながら、お互いがWin-winになる提案が仕事をスムーズに進めてくれるでしょう。

3-4.コミュニケーションの迷宮を脱出する「メタモデルの質問法」

メタモデルとは・・・

コミュニケーションの精度を高める質問法です。
私たちは、日々たくさんの情報を出し入れしているわけですが、その情報は、頭の中に誰もが持っている「フィルター」を通過していると仮定してください。

そのフィルターは、1人1人の「思い込み」や「偏見」などによって都合よく情報を解釈しています。
ですから、自分のフィルターを通した情報は、相手に正しく伝わらない。もちろんその逆も同様です。

例えば、

「いつもうまくいかない」のいつもとは、何回くらいなのか?
「みんなが賛成している」のみんなとは何人中、何人くらいなのか?
「その価格は高い」の高いとは、何と比べて高いのか?

交渉のシーンで、こうした食い違いが起こったままコミュニケーションを進めてしまうと、もはや迷宮入りです。お互いの解釈で交渉に合意したものの、後から確認したら条件面の認識が違った・・・そんな大きなトラブルに発展しかねないのです。

メタモデルの質問を駆使することで、相手のフィルターによって省略されたり、ゆがんでしまった情報を正しく把握していきます。

メタモデルの具体的な質問法

●「削除」されてしまった情報をひも解く

・相手『この条件では厳しい。』

→この場合、何が厳しいのか、厳しいと判断する基準がわかりません。
そこで、このように曖昧な部分を明確にしていきます。

・あなた「厳しいとは、具体的には何が厳しいのでしょうか。」

・あなた「どのくらい厳しいとお感じでしょうか。」

●「一般化」されてしまった情報をひも解く

・相手『御社の商品はいつも欠品だね。』

→「いつも」という大まかな表現がされています。
そこで、この曖昧さを明確にしていきます。

・あなた「欠品だったのは、何回中、何度でしょうか。」

●「歪曲」されてしまった情報をひも解く

・相手『今回のプレゼンがダメだったから、もう今後の取引はないだろう。』

→この場合、今回がダメだった=今後も取引がなくなる、という自分の思い込みで解釈されています。そこで、その解釈の歪んだ部分を明確にしていきます。

・あなた「今回のプレゼンは、今後の取引にどうつながるの?」

メタモデルの質問法を身に付けておけば、相手の情報をひも解くだけでなく、あなたのコミュニケーションの精度も格段にレベルアップします。
スマートな交渉に必須です!

3-5.決断・判断の鍵「クライテリアを引き出す質問法」

クライテリアとは・・・

心理学NLPの用語で、「価値基準」とも言います。
物事に対して正しいとか、~~だと信じていることや大切にしていること。捉え方、物差しです。
例えば人生とは「短い」「挑戦」「冒険」だ・・・など。

そして、クライテリアは人それぞれに複数あって優先順位があるという考え方です。
当然、優先度の高いものは、その人にとってより強い動機を呼び起こす大事なものです。

私たちは、このクライテリアの優先順位の通りに物事を選択したり、判断することができると、充実感につながりますし、反対に、優先順位の上位が得られないと不満足につながります。

何かを購入したり、交渉において、もちろん人間関係においても同様です。

仮にあなたが結婚相手に求めるクライテリアが、以下のような順番だとして考えてみてください。

  1. 信頼しあえること
  2. お互いの仕事を大事にすること
  3. 家事を手分けすること
  4. 年に数回は一緒に旅行に行くこと
  5. 1人の時間も作ること

この場合、1人の時間も作ることができても、相手が旅行好きでなければ、「うーん」となりますよね。

そして、家事を手分けすることに同意してくれる相手であっても、仕事に理解がなければ、どうでしょうか。
仕事を大事にしあえたとしても、では、お互いを信頼することができなかったら・・・?

このようにクライテリアとは、人の決断・選択に大きく影響しています。
ですから、相手のクライテリアを把握することは、あらゆる面で影響力を持つことになります。

交渉においても、それぞれに最も重要な条件があります。
相手のクライテリアの高い条件面を交渉の材料にする、切り札にする代わりに、自分にとってクライテリアの高い条件の譲歩を求める。

大抵の場合、相手は、最も重要な条件を前にしてはNOとは言い難くなります。
交渉を有意義に進めていくには、交渉テーマにおける相手のクライテリアの把握は大きなキーです。

クライテリアを引き出す質問法

『あなたにとってこの交渉結果でもたらされる、最も重要なことは何ですか?』

単刀直入にこう質問をして、「はい、それは●●です」と簡単に交渉相手が答えてくれるのか?と疑問に思うかもしれません。

ただし、あなたが相手との信頼関係と相手への尊重の念、そしてお互いにWin-winに導こうという関係性を構築できていれば、お互いのクライテリアを満たしながら譲歩できる案や、方向性を見出すことができるでしょう。

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4.まとめ

交渉なんてドラマや映画の話。
私には交渉なんて関係ない。

そんな風に思ったあなたは、これまで多くの損をしてきてしまったかもしれません。

世の中は交渉で動いている!
そう言っても過言ではないほど、実は私たちの日常に交渉は溢れています。

例えばあなたにも、こんな要求をした経験がありませんか?

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すべて「コミュニケーション」次第で変化します。

私たちの周囲には、日々の人間関係の中で辛い思いや苦労をしている人がたくさんいます。もしかするとあなたも壁にぶつかった経験を持つ1人かもしれませんね。

そうした辛い思いも、コミュニケーションの秘訣を知っているだけで、実は簡単に解決してしまうことがたくさんあるのです。


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