
研修やセミナー、本でコーチングを勉強していると、ティーチングという言葉が比較対象として書かれることがあります。
こうした中で、
- コーチングとティーチングとの違いは何なのか?
- コーチングが有効な場面とティーチングが有効な場面を知りたい。
- ティーチングが「相手のモチベーションを下げたり、依存を生む」のは本当か?
などのように思ったことがあるかもしれません。
そこでこの記事では、この様な疑問にも答えていきたいと思います。
最初に「コーチングとティーチング」の違い。そして、日々の様々な場面で「コーチング ティーチング」どちらを使っていけば効果的なのかをお伝えしていますので、日々の活動に具体的に活用できるヒントにしていただければと思います。
1.コーチングとティーチングの違い
まずは、コーチングとティーチングの違いについて、簡単にまとめていきます。
コーチングとティーチングをそれぞれ一言でお伝えすると、コーチングは「相手の中にある答えを引き出すこと」。ティーチングは「答えを教えること」になります。そこから言える違いを表で確認していきましょう。
<コーチング ティーチング 比較表>
コーチング | ティーチング |
---|---|
相手の中にある答えを引き出すこと | 答えを相手に教えること |
コーチングでは、相手の中に答えはすべてあると考えます。 | ティーチングは教える側が答えを持っていると考えます。 |
コーチの役割 コーチの役割は相手の中にすべての答えがあると信頼して、答えを引き出すサポートに徹することとなります。アドバイスを求められても、相手の答えを引き出すように質問していきます。 | ティーチャーの役割 ティーチャーの役割は、スキルを教えるのか、アドバイスをするのか、相手が気づくように促すのか。相手のスキルレベル、成熟度によって、伝え方を変えることです。 |
コーチの最大の役割 コーチの最大の役割は、相手1人ではたどり着けなかったであろう、本人も気づいていない場所へ導くサポートをすることです。 | ティーチャーの最大の役割 ティーチャーの最大の役割は、可能な限り言語化し、再現性のあることを相手ができるようにすることです。 |
コーチングのメリット
| ティーチングのメリット
|
コーチングが有効な時 答えや、やり方が決まっていない仕事を任せたり、課題改善や次期目標などを設定する時 例えば、「1on1の面談」で行なう、部下が自分自身で設定する「来期に手に入れたい結果」など | ティーチングが有効な時 答えや、やり方が決まっている業務を相手に習得させる時 初めて行う業務、例えば「電話の出方、切り方」など |
※出典・参照元
2.コーチングとティーチングの併用による効果
コーチングとティーチングを効果的に使う/使い分けるために、知っておきたいことがあります。
それがこちらです。
「コーチングとティーチングのどちらが優れているではなく、それぞれ素晴らしい手法であり、併用するとより効果的となり、使い分けることが大切である」
また、「使い分けが大切」と説明があっても、ティーチングは、上下関係で起こる過度の弊害が生まれるという説明が多くあります。
例えばパワハラのような、部下が受動的になる一方的なコミュニケーションのみが起こったり、上司に対して依存が生まれたり、モチベーションを下げるなど。結果として、コーチングの方が優れており、ティーチングは良くないと印象を受ける場合がほとんどです。
そこで改めてお伝えすると、「どちらが優れているではなく、あくまでも使い分けが大切」です。
コーチングにより、自身の目標や、長期的な視点を持って行動できるようになること。
ティーチングにより、上司の成功や、失敗などの経験も活かしつつ、再現性のあるやり方を身に着けられること。これらを意図的に使い分けることで、想像力を働かせながら、主体性を持って仕事をやりきることが可能となるのです。
3.場面に合わせた、コーチング ティーチングの活用
では、実際に場面に合わせた、効果的なアプローチについてまとめていきます。
分かりやすくするため、コーチングの役割【相手の答えを引き出す】と、ティーチングの役割を【教える】【アドバイスをする】【気づきを与える】の3つに分けて説明していきます。
それぞれの役割を見ていきましょう。
【コーチングの役割】
「コーチング ティーチング比較表」でお伝えしたように、【相手の答えを引き出す】ことです。具体的には、「相手の中にすべての答えがあると信頼して、答えを引き出すサポートに徹する」ことです。
【ティーチングの役割】
【ティーチング①:教える役割】
新しい言葉や、社会人マナー、業務で使用する機器の扱い方などを教えるような、部下のスキルレベルが低く、業務内容が決まっている時に特に有効となります。
【ティーチング②:アドバイスをする役割】
「やり取りを通して、アドバイスを伝える」役割です。
部下の成長段階が比較的浅い場合に選択することが多い方法の1つです。
どこに困っているのか、どのようにやってみたのかなど、聞く中で、どのようにしたらうまくいくか、経験などを含めてアドバイスしていきます。
【ティーチング③:気づきを与える役割】
「相手が自分で考え、気づくように促したり、質問をする」役割です。
業務の難易度に関わらず、部下をさらに次の段階に成長させたいときや、部下が成熟している時に行う方法の1つです。
そして、コーチング、ティーチングを説明するうえで「答えの所在」がとても重要でした。「相手の中にある(決まった答えはない)」のか、「伝える側の中にある(決まった答えがある)」のか、ということです。
それでは、上司は部下に、どのようなアプローチをしていけば効果的と考えられるのか。
以下の「コーチング ティーチング 活用フローチャート」を使います。
上記の「コーチング ティーチング 活用フローチャート」を使った事例をお伝えしていきます。
事例1)『部下との1on1の面談で、来期の目標、ゴールを決める』
- <スタート>の答えである「部下にとっての目標ゴール」は、相手の中に答えがあります
- Aへ進む
- 【コーチング:相手の答えを引き出す役割】が効果的と考えます
事例2)『新入社員に電話の切り方を教える』
- <スタート>の答えは「取引先が切るのを待ってから切る」のように基本的に決まっている
- Bへ進む
- スタッフのスキルレベルは「新入社員なので、低い」と考えられます
- Dへ進む
- 【ティーチング:教える役割】が効果的と考えます
※正確には、新入社員だからスキルレベルが低いとするのではなく、例えば、社歴が長いスタッフでも新しく習得する必要があるスキルは、スキルレベルが低いと考えていきます。
事例3)『部下が取引先との価格交渉で行き詰まっている』
- <スタート>の答えは「価格交渉で行き詰まっている」なので、相手(部下)の中には答えを持ち合わせていません
- Bへ進む
- スタッフのスキルレベルは低くもないが、高いとまでは言えない場合
- Eへ進む
- サポートの必要性が高い、必要であると感じる相手の場合
- Fへ進む
- 【ティーチング:アドバイスをする役割】が効果的と考えます
※⑤の時点でサポートの必要性が低い場合は、Gへ進み【ティーチング:気づきを与えるの役割】が効果的になります。
※サポートの必要性とは、「どの育成段階なのか」と言い換えることもできます。
育成段階として低ければ、アドバイスが必要ですし、高ければ本人の気づきを促すことが重要になります。
「コーチング ティーチング 活用フローチャート」を使用または、頭の中でイメージして、コーチング、ティーチングをどのように活用していけばいいか、参考にしていただければと思います。
業務内容や、相手のスキルレベルに合わせてアプローチ方法を変えることで、より的確に相手の成長を促進できるようになるのです。
4.まとめ
この記事では、「コーチング ティーチング」について、2つ違い、場面に合わせた有効な活用方法について、ご紹介してきました。
「コーチングとは、相手に答えがあると考え、その答えを引き出す手法」であり、「ティーチングとは、答えは伝える側にあると考え、必要な情報や知識を共有し、相手が同じことをできるようにサポートする」ことでした。
どちらかが優れているということではなく、場面、状況に合わせたコーチング ティーチングを行うことで、相手の能力や可能性を最大限広げられる存在になることができるのです。
あなたがより多くの人に影響を与え、大きな成果を出すために、少しでもお役に立てれば幸いです。
※出典・参照元