
仕事ができる人、
そしてプライベートがうまくいっている人は
例外なくコミュニケーションが上手です。
「コミュニケーションが上手」と聞くと、
面白い話ができたり、話すネタが豊富な人、
といったイメージを浮かべる方が多いのですが、
こういった人たちは、話し方だけが上手なのではなく、
実は聴き方も上手です。
多くの場合、あなたが安心感や好感、
そして信頼感を感じる方というのは、
あなたの話をよく聴いてくれたり、
理解してくれたり、受け入れてくれます。
つまり、「あなた自身をわかってくれている」と感じる人ではないでしょうか。
このように聴き方が上手になると、
あなたは会話のたびに好感を与え、
信頼を与え、評価を上げ、
その人にとってはなくてはならない不可欠な存在になることができます。
では、どうしたら相手に好感や安心感といった状態を感じてもらい、
信頼関係を築く聴き方ができるのか。
その方法の一つにプロが活用する
バックトラッキングという「聴き方」のスキルがあります。
バックトラッキングとは、
実践的な心理学と言われるNLP(神経言語プログラミング)の話の聴き方の一つです。
あなたの聴き方を高め、
ここでご紹介するバックトラッキングを学び実践することで、
周囲からの信頼や好感度を一気に高めてください。
![]() | 著者:足達 大和 全米NLP協会公認・NLPトレーナー |
当サイト「Life&Mind」の運営元である「NLP-JAPAN ラーニング・センター」の専属トレーナー。5,600回以上という圧倒的な回数の研修実績を持つ。 NLP-JAPANラーニング・センターとは、日本最大手の「NLP総合スクール」で、NLP業界の世界5大組織と連携。日本で唯一、NLPの基礎から大学院レベルまでの学びを提供している日本最高峰のNLPトレーニング機関。 |
目次
1.プロが活用する聴き方のスキル「バックトラッキング」とは
コミュニケーションで人に影響を与え、変化をつくる天才と呼ばれたカウンセラーやセラピストたちのコミュニケーションパターンを誰もが活用できるようにしたNLPの一つの技法、それがバックトラッキングです。
人間関係に必要な、ラポールと呼ばれる相手との信頼関係を築く話の聴き方のことで、一言でお伝えすると、相手が発した言葉を繰り返して、会話をすすめていく聴き方の技法です。日本のカウンセリングの世界では「オウム返し」と言われ、簡単な例でお伝えすると以下のようになります。
相手 :「この前ね、久しぶりに映画館で映画を観たの」
あなた:「映画館で、映画を観たの~」
と、相手が言った言葉を活用して、言葉を返していくコミュニケーションの進め方です。活用するときの大切なポイントは、相手が使った言葉をそのまま使うということです。
バックトラッキングという言葉は、「情報の塊を戻す」という意味から来ています。パソコンで音楽データを取り込むとき、以下のような画面を観たことはありますか。
赤線で囲んだところにトラックという表記があります。
ここでお伝えしているトラックという言葉は、「情報の塊」を意味した言葉で、その情報を元に戻す、という意味からこのバックトラッキングという言葉が作られました。
ですから、後で詳しく説明していきますが、その人が発した言葉だけでなく、言葉にならなかった「感情や気持ち」、そして「話の要点」なども相手の情報という観点でバックトラッキングの対象として活用されています。
※心理学NLPに関しては、こちらの記事もおすすめです。
2.バックトラッキングの効果
バックトラッキングの効果は、主に以下の3つです。
- 否定や拒否といった違和感や抵抗感を打ち消す
- 「大切にされている」といった肯定的な感覚を相手に与えることができる。
- 相手の悩み事や問題の整理を促し、あなたを貴重な存在に感じてくれる
それでは、1つずつ見ていきましょう。
2-1.否定、拒否といった違和感や抵抗感を打ち消す
相手に対して抵抗感や違和感があると、その人に対して本音の部分は話したくないものです。あなたへの否定や拒否といった違和感や抵抗感を打ち消し、ギクシャクした状況を引き起こさないだけでも相手とのコミュニケーションはスムーズに進み、あなたの印象は変わります。
違和感や抵抗感が生まれる例をご紹介します。以下の3つの例をみてください。
相手 :「仕事では挑戦することを大事にしたいな」
あなた:「仕事でチャレンジすることは大事だよね」
相手 :「仕事と人生には、向上心が大事だよね」
あなた:「成長する気持ち、大事だね」
相手 :「人生で大切なものは、やっぱり健康だね」
あなた:「そうだよね、やっぱり体調は大切だね」
言いたいことは同じでも、使っている言葉が違うのがわかりますね。
このように相手と同じ言葉を使わないと、
- ちょっと言いたいことと違うんだよな・・・
- この人私の話をちゃんと聴いてくれてるのかなぁ・・・
- なんか微妙にこの人と合わないなぁ・・・
と、いった気分や気持ちを生み出します。
あなたが話し上手でも、調子にのって余計な会話(言葉)であなたの評価を下げないでください。相手の言葉を使わず、先ほどのような会話を進めていると、
- ちょっと言いたいことと違うんだよな・・・
- この人私の話をちゃんと聴いてくれているのかなぁ・・・
- なんか微妙にこの人と合わないなぁ・・・
というように、いくらあなたの提案が良くても、今一歩採用に踏みきれません。
つまり、信用や信頼に欠けるわけです。
話し上手なのに売れないセールスというのは、相手の言葉を無視して、自分の言葉を優先して話をすすめます。そうすると先ほどご紹介した例のように「挑戦」を「チャレンジ」と言い換えたり、「健康」を「体調」と言い換えたりして、「なんだかこの人とは合わない」という否定や拒否といった違和感や抵抗感を生み出します。
少し掘り下げてお伝えすると、相手が言った言葉をそのまま返すので、相手は否定のしようがありません。以下の例をみてください。
相手 :「この前ね、久しぶりに映画館で映画を観たの」
あなた:「映画館で、映画を観たの~」
相手 :「いや、観てないよ」
という会話にはなりませんよね。
極端な例に思えるかもしれませんが、相手の使った言葉をそのまま使うバックトラッキングは、会話中の相手のなかで、拒否や否定できる状態をなくします。つまり、「NO」といったネガティブな状態を打ち消す効果があります。
2-2.「大切にされている」といった肯定的な感覚を与えることができる
バックトラッキングを意識して、相手との会話を進めていくと、自分のことを聴いてもらっている、受け入れてもらっているという好感や安心感、そして信頼感を相手に与えることができます。
相手が使った言葉を活用すると、相手の無意識のなかに「そうそう」「そうなんです」「そのとおりなんです」というように、「YES」の意味を含む肯定的な言葉が繰り返されます。
「YESセット」と呼ばれる説得の法則があります。これはセールスや催眠的アプローチで活用されるものですが、先にお伝えしたように「YES」と答えられる質問を繰り返していくと、「NO」ができない状態になっていく、否定できない状態になっていくことを言います。
逆に答えが「YES」となる会話を続けていると、相手がオープンになり、心を開いてくるというものです。
ここで、バックトラッキングを使わずに会話をすすめる場合と、バックトラッキングを活用して会話をすすめる場合を比較します。ちょっとした違いですが、活用された時の相手の気持ちや感覚を想像していただくと、その違いに気づけると思います。
・通常の会話の場合
相手 :「上司のことでちょっと悩みがあって・・・、ちょっと相談いいかな?」
あなた:「なに? どうしたの?」
・バックトラッキングした場合
※( )内は、相手が無意識につぶやく心の声だと思ってください。
相手 :「上司のことでちょっと悩みがあって・・・、ちょっと相談いいかな?」
あなた:「上司のことで悩みがあるんだね(そう)。相談(そうそう)、いいよ。何、どうしたの?」
となります。
このバックトラッキングとは、相手の「そう」「そうそう」といった無意識の声で「YES」をたくさん生み出す効果があります。
ですから、相手が何かを話すたびに相手の言葉を繰り返すので、抵抗感や違和感を生み出すことなく、「話をしっかりと聴いてもらっている」という安心感や「自分を受け入れてくれている」という肯定感、そして「大切にされている」といった重要感といったものを相手の無意識に蓄積することが可能です。
相手 :「週末に彼女と初めてデートしたんだよ、楽しかったなぁ」
あなた:「良かったな!」
ではなく、
相手 :「週末に彼女と初めてデートしたんだよ、楽しかったなぁ」
あなた:「週末に(そうそう)、初めてのデートか(そうそう)、それはさぞかし楽しかったろうな(そうなんだよ)。良かったな!(うんうん)」
というふうに相手の無意識は反応していきます。
「理解してくれている」「わかってくれている」「大切にされている」ということを自然に感じてもらう技法であり、逆にお伝えすると、聴くことを通して、
- 「あなたのことを知ろうとしています」
- 「あなたのことを理解しようとしています」
- 「あなたのことを知りたいと私は思っています」
といったメッセージを相手の無意識に伝えるコミュニケーション、それがバックトラッキングです。
2-3.相手の悩み事や問題の整理を促し、あなたを貴重な存在に感じてくれる
あなたにも経験があると思いますが、自分一人では解決できない悩みや問題も人に話を聴いてもらっているだけで、問題が整理され、問題が解決できたということがありませんか?
相談事などの会話では、具体的な解決策を生み出す前に、まず現状の把握が必要といわれています。そんな時にこのバックトラッキングは有効で、相手が自分の考えや思い込み、また絡みあった状況を整理することが可能になります。
バックトラッキングを活用すると、先にお伝えした否定や拒否といった違和感をなくし、安心や肯定感を感じながら、問題を整理していくことができます。
それに加えて、自分のゴチャゴチャした心や頭の中を整理し、正確に聴いてくれる人だというあなたの評価を上げてくれます。
つまり、評価が高いカウンセラーやコーチ、またコンサルタントをはじめとする一流の人たちは、以上のような効果がわかっているので、このバックトラッキングを活用します。
3.バックトラッキングの種類
その1 | ・事実を繰り返す |
---|---|
その2 | ・気持ちや感情を繰り返す |
その3 | ・要約する |
ここではどのような種類があるかをお伝えします。
種類には、「事実」「感情や気持ち」「要約」の3つがあります。
3-1.事実をバックトラッキングする
事実というのは、先の例で言うと「映画館で映画を観た」という事実をバックトラッキングしています。
相手 :「この前ね、久しぶりに映画館で映画を観たの」
あなた:「映画館で、映画を観たの~」
これがその例です。相手の言葉を用いて事実をバックトラッキングしていきます。
相手 :「この前、高校の同窓会に行ってきたんだよ」
あなた:「高校の同窓会に行ったんだ」
相手 :「週末に子どもと釣りにいったんですよ」
あなた:「週末にお子さんと釣りに行ったんですね」
といった形で活用します。
※「子ども」と言っているのに「お子さん」と言うのは違うのではないか、と思われた方もいると思いますが、なんでもかんでも繰り返せばいいというものではありません。
相手が上司で、子どもが男の子であるなら、「息子さんと」「ご子息と」「ぼっちゃんと」、といろんな言い回しがあります。ここは相手との関係性で、その場面にふさわしい適切な言葉を使ってください。
3-2.感情や気持ち
「うれしい」「たのしい」「かなしい」「つらい」、そういった感情をバックトラッキングします。感情は、特に相手の無意識に影響を与え、「この人はわかってくれているなぁ・・・」としみじみとしたあなたへの信頼感を生み出すことができます。
相手があなたに対して、「この人はわかってくれている」「自分のことを理解してくれている」という相手の無意識に肯定的な評価を与えるキーワード、それが感情です。
事例としては、
子ども:「ママ!学校でうれしいことがあったの。テストで、100点とったよ!」
母 :「それはうれしかったね、ママもうれしいよ!」
子ども:「ママ、テストで20点だった・・・もうイヤ」
母 :「それはイヤだったね・・・」
といった使い方です。
言った言葉はもちろんですが、相手が言えていない、表現できていない感情を汲みとって伝えることもできます。
先にお伝えしたようにトラックとは情報の塊ですから、言語で表現できていない感情や気持ちといった情報も、トラックとして繰り返すことができます。
例えば、
子ども:「ママ、テストで20点だった・・・もうイヤ」
母 :「イヤだったね・・・。悔しかったね」
などがそうです。
この相手が言えていない感情を扱うときに注意していただきたいのは、相手が感じている感情の言葉がズレていると、相手が違和感や抵抗感を持ち始めます。
カウンセリングなどの傾聴トレーニングを積んでいくと、的確に相手の気持ちや感情を汲みとることができますが、初めのうちは相手が言った感情の言葉を活用してください。
ここで、感情や気持ちを表現できるように、感情のリストを挙げておきます。以下の言葉を参考にしながら、相手とのラポール形成に役立ててください。
・感情表現の例
【ポジティブな感情や気分を表す言葉の例】
楽しい、愉しいね。痛快だね。気持ちいいね。爽快だね。軽やかだね。明るいね。など
※「スゴイね」「さすがだね」「偉い!」といった言葉は、相手の気分や気持ちというよりも、あなたが相手を判断している「褒め言葉」になります。会話の中で使ってはいけない言葉ではありませんが、バックトラッキングという観点では、これらの言葉は使いません。
【ネガティブな感情や気分を表す言葉の例】
※ネガティブな感情や気持ちの言葉をバックトラッキングすると、相手がより辛くなったり、悲しくなったりするのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、「共感する」という観点から活用すれば心配はいりません。その人に寄り添うことが目的ですから、相手の状態を尊重しながら活用してください。
3-3.要約
これはとてもシンプルです。相手の話が長い場合、相手のキーワードとなる単語を用いながらまとめること、つまり要約することです。例えばこのような感じです。
相手 :「あの人が◯◯してくれなくて、ひどい目にあったんです。これだけじゃないんです。他にも・・・(話は続く)・・・もう、あの人と一緒にいたくないんです」
あなた:「その人はいろいろなことで、あなたにイヤな思いをさせたんですね(そうそう)」
といった具合です。
事実や感情、気持ち、要約のどれが一番大事かというと、その場面によって異なりますが、どの種類でも外せないのが、相手の使った言葉であり単語です。繰り返しになりますが、言葉や単語をしっかり聴き取るようにしてください。
そして、実際に活用しようとすると、相手のセリフや自分のセリフが少し長く感じる方もいます。もし、そういった場合は、相手のセリフの最後の言葉をバックトラッキングすれば大丈夫です。相手をよく観察しながら、よく聴いていってください。
4.バックトラッキングの活用事例
ここでは、バックトラッキングの活用事例をビジネスや家族、プライベート、そしてカウンセリングやコーチングといった問題や課題解決の場面でどのように使うか、3つの場面の活用事例をご紹介します。各場面を3つのケースでお伝えします。
4-1.ビジネスの場面での活用事例
・セールスの場面で
相手 :「今回は経費削減を可及的速やかに対応しなければなりません」
あなた:「当社では、経費削減をまさに可及的速やかに対応できるサービスをご提案できます」
・プレゼンの質疑応答の場面で
相手 :「◯◯について、どのように活用できるのか、もう少し詳しく教えてください」
あなた:「ご質問ありがとうございます。正確にお答えしたいので、確認させてください。◯◯について(そう)、どのように活用できるのか(そうそう)、というご質問でよろしいですね(そうそう)」
※このケースは、質問者が、自分の質問、そして自分自身のことをちゃんと受け止めてくれているという印象を与えていることがポイントです。すぐに答えず、相手の聴きたいことをバックトラッキングで確認するだけで、安心感や好感、信頼感を築くことができます。
・新規の顧客獲得ができた部下に対して
部下 :「新規の◯◯商社から採用の連絡がありました。早速受注もいただきました!」
あなた:「◯◯商社に採用か(そうです!)。 新規のお客様だな(そうです!)。 受注、おめでとう。うれしいな!」
※すぐに「やったな!」といった言葉で返すのではなく、相手の言葉で事実を取り上げ、感情を汲みとってバックトラッキングしている活用例です。
4-2.家庭やプライベートでの活用事例
・親子の会話の場合
子ども:「今日学校で嫌なことがあったんだ」
親 :「嫌なことがあったの・・・(そう)、どうした?何があった?」
※つい、「何?何があったの?」と聴きたいところをバックトラッキングして質問をしているところがポイントです。子どもに「聴いてくれている」という安心感を与えます。
・夫婦の会話の場合
夫:「ちょっと熱があるみたいだから、会社休もうと考えてるんだよ」
妻:「熱がありそうなの(そうそう)・・・。だったら会社休みなよ」
※この会話も同様、つい「休みなよ」と返すところをバックトラッキングして伝えているところがポイントです。
・恋人同士の会話の場合
彼女:「ねぇ、私のこと、愛してる?」
彼氏:「愛してる」
※解説はいらないと思います。ここで、「大好き」と答えても彼女は納得しないかもしれません。女性は言葉で確認したがる傾向にあると言われていますので、男性の方で照れくさくて言えない方は、バックトラッキングのつもりで活用してください。
4-3.カウンセリングやコーチングなどでの活用事例
・カウンセリングの場合
クライアント:「人間関係で悩んでるんです。実は上司の対応に困っていて・・・(話はつづく)・・・いろいろ考えたんですけど、落ち込んでしまってどうしたらいいかわからないんです」
カウンセラー:「つまり、上司との関係で落ち込んでいらっしゃるんですね」
※要約して、クライアントの感情をバックトラッキングしている例です。
・コーチングの場合
クライアント:「将来独立したいと思っているのですが、不安で時間だけが過ぎている状況なんです」
コーチ :「不安な状況が続いてるんですね。そして、今は不安だけど、将来は独立したい、そう考えていらっしゃるんですね」
※このケースはバックトラッキングしながら、クライアントの目的や目標に意識を向けていく質問としても有効な例です。
さまざまなケースをご紹介しましたが、時には気持ちを受け止めることが必要な場面、また最後のコーチングの例でご紹介したように、解決策を見出していく場面と状況によって、バックトラッキングの使い方に柔軟性を持ちながら活用してください。
5.バックトラッキングに一言添えて、あなたの評価をさらに高める
バックトラッキングした後に一言加えることで、相手との関係性がより深まり、さらにあなたの評価を高めることができます。ここでは一言添えるやり方を3つお伝えします。それは、「促す言葉」「肯定的な支持」「質問」です。
5-1.バックトラッキングに「促す言葉」をつけて活用する
促す言葉とは、「それで」「それから」「で、どうなったの?」「どうだった?」という言葉を添えて、会話を促進させます。
相手 :「この前ね、久しぶりに映画館で映画を観たの」
あなた:「映画館で、映画を観たの~(そうそう)、で、どうだった?(促す言葉)」
このように「促す言葉」を添えて、相手との会話がさらに広がるように活用していきます。
5-2.バックトラッキングに「肯定的な支持」をつけて活用する
肯定的な支持とは、相手が言ったことに対して、あなたも同意ができる点を添えて、会話をすすめます。相手との共感ゾーンが生まれることで、相手との関係性はより良くなることでしょう。使い方としてはこのような形です。
相手 :「この前ね、久しぶりに映画館で映画を観たの」
あなた:「映画館で、映画を観たの~、で、どうだった?」
相手 :「やっぱりいいよね。あの空間は」
あなた:「いいよね。あの空間、私も好きなんだ(肯定的な支持)」
といった形で活用します。自分もいいと思ったことを伝えて下さい。嘘や適当に合わせている会話は、相手の無意識はちゃんとわかっていて、違和感を持ち始めます。ここは相手に対しても自分に対しても、誠実になって伝えていくことがポイントです。
5-3.バックトラッキングに「質問」をつける
言葉通りバックトラッキングした後、質問を添えていきます。促す言葉でご紹介した、「で、どうだった?」といったことも質問のように見えますが、ここではただのお喋りではなく、ビジネスといった具体的な目的がある場合などに有効です。
企業の経営者とコンサルタントの会話を事例にすると以下のようになります。
クライアント :「今年は利益を生み出すために経費削減を行いたいと考えています」
コンサルタント:「利益を生み出すための経費削減ですね(そうそう)。大切だと思います(肯定的な支持)。そこでもう少し詳しく教えて下さい。どういった経費項目の削減を特にお考えでしょうか?(質問)」
この「質問」を付け加えることによって、相手には、「この人はちゃんと理解しようとしてくれている」「わかろうとしてくれている」「頼もしい」といった信頼感が生まれてきます。
プラスアルファの事例を3つお伝えしましたが、まずは、バックトラッキングそのものを意識して活用してください。そして、慣れてきたら、あなたのコミュニケーションの目的に相応しいプラスアルファ、「促す」「肯定的な支持」「質問」を用いてください。
以上を公式のように示すと以下のようになります。
バックトラッキング+促す言葉(それで…/それから…)
バックトラッキング+肯定的な支持(いいね/好きです/私もです)
バックトラッキング+質問(もう少し具体的に…/詳細を教えて下さい…)
コミュニケーションは、相手や状況によって柔軟に対応することが大切ですから、バックトラッキングの後に「質問」、その後に「肯定的な支持」という順番であったり、「促す言葉」の後に「質問」といった順になってもかまいません。
6.まとめ
今回は相手との信頼関係を築く話の聴き方、バックトラッキングをご紹介しました。大切なポイントは、相手の使った言葉を活用して会話を進めていくことです。信頼関係を示すラポール形成の技法の一つですが、これだけでもあなたへの好感や安心感、そして信頼感を高め、相手にとって貴重な存在としての評価を高めてくれます。ぜひ、活用してください。
※相手とのより良い関係づくりであるラポール形成については、下記の記事で学びを深め、高め、広げてください。
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