あなたはティーチングに関して、このように思ったことはありませんか?
- 学ぶことで、どんなメリットがあり、何をできるようになるのだろうか?
- 「相手のモチベーションを下げたり、依存を生む」って聞くけれど、どうすればいいの?
- どうすれば効果的なティーチングをできるようになるの?
- そもそもティーチングって何?教えること?
このように考え、WEBでティーチングを調べても、ほとんどがコーチングの対比としてしか出てきません。
そこで今回はこちらについてまとめました。
- ティーチングとは何か
- 3つの役割について
- ティーチングの基本となる「信頼関係」を築く方法
- 相手のモチベーションを上げながら、成果につなげる具体的な方法
- ティーチング力の高め方 など
さらに、もっとも効果的だと言われる「ティーチング」と「コーチング」を組み合わせたコミュニケーションの取り方についても、ご紹介いたします。
私たちの日常には、たくさんのティーチングがあります。ビジネスにおいて部下を指導する時、先生が生徒に勉強を教える時、親が子供に何かを教える時、など。
それにも関わらず、ティーチングは、上下関係で起こる過度の弊害が生まれたり、相手の主体性を奪うという説明が多くの場合されています。
例えばパワハラのような、部下が受動的になる一方的なコミュニケーションのみが起こったり、上司に対して依存が生まれたり、部下のモチベーションを下げるなど。結果として、ティーチングは良くないという印象を受ける場合がほとんどです。
しかし実は、ティーチングには相手が主体的になったり、モチベーションを上げたりする効果があるのです。この記事を読んでいただき、実践されることで、皆さんのティーチング力が高まるきっかけになれば嬉しく思います。
目次
1.ティーチングとは?
1-1.ティーチングとは?
ティーチングとは、「新しい学びを得ようとする人に対して、必要な情報や知識を共有し、相手が同じことをできるようにサポートすること」です。
さらに、「個人や企業、チームが、最大のパフォーマンスを発揮できるように、導く」ことが可能となります。
そのために特に重要なことが下記2点です。
1.信頼関係を短時間で築くこと |
ティーチングで大切になってくるのは、信頼関係を短時間で作れるかどうかです。なぜなら、「信頼できる」と感じている人からは、自然と学ぼうとする心構えができるからです。 「信頼できる」と感じている人と、そうではない人から、何かを教わる時を思い出してください。話の聞きやすさや、内容の受け取りやすさに違いを感じた経験が、皆さんにもあるのではないでしょうか。 |
2.意識的に相手のモチベーションを上げる伝え方をすること |
ティーチングはコミュニケーションスタイルとして、一方通行になる可能性があります。特に、業務難易度が低く、部下のスキルレベルが低い時、話し手が言いたいことを一方的に伝えてしまいます。 結果、聞き手が威圧的に感じてしまったり、退屈になり、大切なところが伝わらなくなってしまうのです。さらには、知らず知らずのうちに、相手のモチベーションを下げ、相手の長所さえも潰してしまうことがあります。 そうならないためにも、ティーチングでは、相手のモチベーションをコントロールすることが大切です。人には、それぞれの学習のタイプというものがあります。 そのタイプに合わせて伝え方を工夫し、相手のやる気を引き出し、モチベーションを上げ、さらには相手が自発的に考えたり、知識を吸収できるようにする必要があるのです。 |
1-2.ティーチングの3つの役割
ティーチングと言っても、実はいくつかの側面、役割があります。ここではその役割を3つに分けて説明していきます。
【ティーチング①:教える役割】
新しい言葉や、社会人マナー、業務で使用する機器の扱い方等を教えるような、部下のスキルレベルが低く、業務内容が決まっている時に特に有効となります。
【ティーチング②:アドバイスをする役割】
「やり取りを通して、アドバイスを伝える」役割です。
部下の成長段階が、比較的浅い場合に選択することが多い方法の1つです。
どこに困っているのか、どのようにやってみたのか等、聞く中で、どのようにしたらうまくいくか、経験等を含めてアドバイスしていきます。
【ティーチング③:気づきを与える役割】
「相手が自分で考え、気づくように促したり、質問をする」役割です。
業務の難易度に関わらず、部下をさらに次の段階に成長させたいときや、部下が成熟している時に行う方法の1つです。
1-3.ティーチング、コーチング、コンサルティングの違い
さらにここでは、ビジネスにおける、ティーチング・コーチング・コンサルティングの特徴を見ていきましょう。
【ティーチング】 |
ティーチングとは、自分の知識や経験の引き出しの中から「考え方、方法、スキル、戦略、手順」などを「相手やクライアント」に提供することであり、その最大の特徴は「できるだけ言語化された再現性のあることを、相手ができるようにすること」でした。 |
【コーチング】 |
コーチング最大の特徴は、「適切な質問を使い、企業やチーム・個人が、最大のパフォーマンスを発揮できるようにする」ことです。「必要な答えやリソースは、クライアントが持っている」という考え方がベースにあります。 |
【コンサルティング】 |
コンサルティング最大の特徴は、「専門的なフレームやスキル・事例・経験を元に、ティーチングやコーチング、時には介入を行い、クライアント(企業など)の業績を高める」ことです。 |
2.ティーチングを実践「3つの役割」と「実践のポイント」
それではティーチングの3つの役割(教える役割/アドバイスをする役割/気づきを与える役割)ごとに、そのポイント、注意点、及び実践例を見ていきましょう。
2-1.ティーチングの役割①「教える」
「やってみせ、言って聞かせ、やらせてみて、誉めてやらねば人は動かじ」(山本五十六)がまさにドンピシャで、教える役割はこのように行います。
やり方が決まっていたり、業務難易度、相手のスキルレベルが比較的低い時に行う手法の1つです。やって見せると同時に、なぜそれをやるのか、どんな価値があるのかを伝えられると再現性が早くなり、柔軟に対応する力や、思考力が相手に生まれやすくなり効果的です。
また、うまくいくポイント、ミスを減らすポイントも同時に伝えることで、習得速度が上がり、ミスの軽減、さらに次の世代にも意図が伝わりやすくなります。これらを意識的に行うことで、組織の文化を作ることも可能になります。
そして、やらせてみて、うまくいけば褒める。これにより、モチベーションを上げることができ、質の向上にも繋がります。うまくいかなかった時は、良かった点、改善点を伝え、必要があればもう一度やって見せます。そして、できるまで根気強く寄り添いながら、やっていくことが重要です。
【具体例】電話の切り方を教える場合
- やってみせる
- (みせた後)言って聞かせる
- やらせてみる
- 褒める
上司:「電話を切るときは、相手が切るのを待ってから、切るようにしてね。やってみるから、見ててね。」
上司:「相手がすぐに切らないときもあるけど、その際、受話器の口元の部分は抑えて、こちらの声や音が入らないようにして、相手が切ってから、こちらが切るようにしてね。」
上司:「じゃ、やってみて。見てるから」
上司:「いいね!その調子でやっていこう!」
やってみせ、やらせてみて、褒めることで、モチベーションを上げながら、効率的なスキル習得が可能となるのです。
業務上、緊急を要する時は、上記の限りではありませんが、それでもできる限り、実践されることをお勧めします。
さらに、ここで考えたいのは、営業等の接客や、チームをまとめるといった、状況に合わせた柔軟性や、想像力を必要とするような、マニュアルだけでは不十分な仕事を教える時のティーチングについてです。
一般的に「業務の難易度」と「部下の成長段階」で方法は変わってくるかと思います。
そこで、さらに2つのティーチングの役割についてお伝えします。
2-2.ティーチングの役割②「アドバイスをする」
どこに困っているのか、どのようにやってみたのか等を聞く中で、どのようにしたらうまくいくか、経験等を含めてアドバイスしていきます。
業務難易度及び、部下の業務スキルレベルが低~中程度の時。または、育成段階が比較的浅い時に行います。
まず大切なのは、どこに困っているのか、どのようにやってみたのか等、自分の意見は述べずに聞くことです。
それにより、部下が問題を整理できたり、話を聞いてもらっているという感覚を持つことができるのです。その結果、信頼が生まれ、上司にアドバイスを求めやすくなります。
与えられたアドバイスでも、自分から求めたものであるのならば、素直に受け入れ、やってみようとなる可能性が高くなります。そのためにも、日ごろから、「いつでも相談していい」という関係を作っておくのが重要です。
そして、アドバイスをする時に大切なことは、相手がうまくいっていない時、さらにはもっとうまくいくために、自分自身ならばどのように動くかを「相手の立場」に立って考えることです。
伝える時は「私は〇〇だった」と過去の成功体験で伝えるのではなく、自身が今相手と同じ体験をしていたら、どのように動くのか、具体性をもって伝えます。またそれは、相手に再現可能な、言語化や体系化したものとなっている必要があります。
【具体例】
- 上司:「どうした、苦しそうな顔をして」
- 部下:「取引先との価格交渉で苦戦しているのですが」
- 上司:「どんな感じなのかな?」
- 部下:「この見積書なのですが見てもらえますか?」
- 上司:「うん、かなりいいところまできてるね。いいね。あーこれなら、初回の発注数と、今後の発注数については、具体的にどれくらい進んでるかな?」
- 部下:「なるほど。そこが曖昧でした。ありがとうございます!」
伝える際は、できるだけ相手がアドバイスを求めた時に伝えるのが効果的です。こちらから一方的に伝え過ぎてしまうことで、部下の思考の機会を奪ったり、受動的な部下を育ててしまう可能性が高くなってしまうのです。
【注意点】
相手が求めていない時に、一方的にアドバイスをすることには注意!!
特に避けたいのは、相手が求めていないのに、それに気づかず、一方的にアドバイスをしてしまうことです。この場合、アドバイスをしても、相手のモチベーションは上がらず、どんなに良い手法でも、成果が半減してしまう可能性が高くなってしまいます。
さらには、「あの上司は聞いてもいないのに、一方的に自分の経験や価値観を押し付ける」となってしまうのです。
相手の話を聞きながら、どのようにしたらうまくいくか、相手が求めた時に、自身の経験等を相手の立場に置き換えながら伝えることで、効果的なアドバイスになるのです。
2-3.ティーチングの役割③「気づきを与える」
相手が自分で考え、気づくように促したり、質問をします。そして、知的好奇心等を刺激してモチベーションを上げるように行います。
業務の難易度にかかわらず、部下をさらに次の段階に成長させたいときや、部下が成熟している時に行う方法の1つです。
自ら気づくことで、部下の主体性が引き出され、自分自身で考え、判断や決断ができるようになるのです。基本的な方向性やゴールは、上司やチーム全体で決めていきますが、その後のプロセスは任せ、部下の成熟度によっては一切口を出しません。
上司は口や手を出さず、困難等にぶつかった時でも、「〇〇ならできる」と信頼し、アドバイスはせず、考えさせる。または、本人が考えやすいようにヒントを与えるだけにとどめます。
ビジネスならば、次の自身の役職または、同等の役職に就く候補者を育成する段階に行うイメージです。さらにいうと、コーチングとの併用がとても効果的です。
【具体例】
- 上司:「どうした、苦しそうな顔をして」
- 部下:「取引先との価格交渉で苦戦しているのですが」
- 上司:「具体的には、どんな感じなんだ?」
- 部下:「この見積書なのですが、見てもらえますか?」
- 上司:「なるほどね。これを見る限り〇〇なら、さらにうまく進めることができると思うよ」
- 部下:「もう一度、考えてみます。ありがとうございます!」
【ポイント】
口を挟まないと決めたら、気になったとしても、最後まで貫き通すこと。
「途中で口を挟むこと=信頼していない」というメッセージを暗に相手に送ってしまったり、「上司に対する依存」を生むことになりかねません。
そして重要なのは、口は出さなくても、内容を把握していることです。そうすることで、自然に見ている(見守っている)というメッセージが相手にも伝わり、例えうまくいかなかったとしても、致命的な状況にならずに済むのです。
さらに、「あなたの成長のために、自分で考えてもらうことを大事にしていきたい。例え失敗しても、自分が責任をとるから」と事前に期待をかけておくことも、モチベーションを上げる方法の1つです。
部下がよりポジティブに主体的に考えたり、行動するようになるため効果的です。
自分で考え、気づくようになることで、主体的に行動し、自分自身でモチベーションを上げることができるようになっていくのです。
この章の最後として、ご存じの方も多いかと思いますが、山本五十六の言葉の続きをご紹介させていただきます。
「やってみせ、言って聞かせ、やらせてみて、誉めてやらねば人は動かじ」
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず」
- ※出典:山本五十六のことば (日本語) ,稲川明雄(著),新潟日報事業社
まさに、アドバイスする役割、そして気づきを与える役割の姿勢そのものを表しているのです。
この3つの役割を、業務難易度や相手のスキルレベル、場面に合わせて意識的に使い分けることで、相手が再現性のあることを効果的にできるようになるのです。
3.より効果的な実践!「ティーチング」と「コーチング」の使い分け
ティーチングとコーチングは併用すると、より効果的となります。特に、ある程度の経験があり、次のステージに育成したい相手に対して、意識して使い分けることでその効果が大きくなります。
ティーチングにより、上司の成功や、失敗などの経験も活かしつつ、やり方を身につけさせる。そして、自分自身で判断が必要な難易度の高い業務や、チームリーダーを任せる際に、コーチングを活用します。
コーチングがティーチングと大きく違うところは、コーチングは相手が自ら答えを引き出せるよう、導くことに徹します。こちらからアドバイスをすることは基本的にありません。
目標達成や、チームをまとめるために「あなたはどのようにしていきたいのか」と、聴くことに徹します。何より、「あなたならできる」と信頼感を持って接し続けていくことが大切なのです。
これらを意図的に使い分けることで、相手が想像力を働かせながら、主体性を持って仕事をやりきることが可能となるのです。
4.ティーチング力を高める具体的な5つの方法
ティーチング力が高いティーチャーの共通点とは何か。2章でお伝えした中にその要素はあります。それは、短時間で信頼関係を築くことができ、相手の成熟度や状況を把握し、教え方を調整できること。
そして何より、その人から教わると自然とモチベーションが上がると思われる、いい影響力を出すことができる人のことです。
筆者である私自身、これらを意識的に学び、活用することで、仕事で役職が上がりました。さらには組織内のリーダーとして5期連続売り上げ目標達成、新しいリーダーを多人数輩出する等、大きな成果を出すことができました。
そこで4章では、そのような力を実際に高める、私自身が具体的に学んだ内容をお伝えしていきます。
4-1.① 相手の学習タイプに合わせて伝える(VAKモデル)
実は、人それぞれには、学習のスタイル、タイプがあります。
そのタイプに合わせてティーチングすることで「聞きやすい、分かりやすい」と感じさせ、モチベーションを上げることができ、さらには相手に影響を与えることまで、できるようになります。ここでは、大きく2つのアプローチ方法をお伝えしていきます。
その一つが、相手の優位五感に合わせる「VAKモデル」です。
人に利き手があるように、人が使う言葉にも、そのようなものがあります。
人が何かを体験をしたとき、人間の持つ五感のうち、「どの感覚を優先的に使って表現するか」というものです。
心理学NLP(注1)では、五感を視覚V(Visual)・聴覚A(Auditory)そして、体感覚K(Kinesthetic/触覚・嗅覚・味覚を合わせて)と3つに分け、その頭文字をとって「VAKモデル」と呼びます。
例えば、
相手が旅行で海に行ったとします。そして、その思い出を聞いたとき、視覚Vが優位の人は、「海が綺麗だった」ように、見えたものを特に話します。
また、聴覚Aが優位の人は、「とても静かで、波の音と風の音が聞こえた」というように、聞こえたものを特に話します。
そして体感覚Kが優位の人は「海が温かく、風が心地よかった」というように体で感じたことを特に表現していきます。
日々の会話で相手が、視覚、聴覚、体感覚のうち、どの言葉を優先的に多く使うかを聞き分け、相手の使う感覚の言葉に合わせて表現していくことで、コミュニケーションがスムーズになります。
すると、「この人の話は分かりやすい」となり、さらには自然と「この人との会話は、なんか合う。分かってもらえている、心地いい」と感じさせ、印象にまで残りやすくなるのです。
(注1)心理学NLP(神経言語プログラミング)は、3人の天才セラピストの卓越した技術や技法をもとに体系化された、最新の心理学であり、コミュニケーションのスキルです。仕事やビジネス、人間関係など、人生全般で使える考え方とスキルを学ぶことができます。詳しくは以下の記事にまとめていますので、合わせてご覧ください。
4-2.② 相手の心を動かし、やる気を引き出す言葉を使う(LABプロファイル)
相手に影響を与えるアプローチの二つ目が、心理学NLPの一つのスキルとして開発された、「LABプロファイル」(LABはラブと読み、Language And Behavior の頭文字をとったもの)です。
「LABプロファイル」を会話に入れることで、相手に大きな影響を与えることが可能となります。
このLABプロファイルでは、相手に影響を与える言語を14のカテゴリー、37のパターンに分けています。そのうち、ティーチングに特に有効な3つのカテゴリー、6つのパターンをここでは紹介いたします。
①方向性
方向性とは何か。「人がやる気を維持したり、物事に興味を持つとき、そのエネルギーは目標の達成、または、問題解決のどちらに集中しているかということ」です。
- 【方向性のパターン】
- 目的志向型:目標に意識を集中し、目的達成という視点から、物事を考える
- 問題回避型:回避すべき問題、起こってはいけない物事に意識を集中する
方向性について「歯磨き」を例に見ていきたいと思います。「歯を磨く理由」を人に聞いたとき、その答え方で2つの方向性が出てきます。
1つ目は、「虫歯にならないため」や、「口臭予防」という理由。2つ目は、「歯を白くしたい」や、「口内を綺麗にしておきたい」という理由。1つ目は、問題回避型の方向性。2つめは、目的志向型の方向性があると、ここでは表現します。
そこで例えば、あなたが歯ブラシを売るセールスマンだとしたら、歯ブラシを売る際、問題回避型の相手には「この歯ブラシを使えば、歯槽膿漏にならない」のような「〇〇にならない」という言葉を使います。
そして、目的志向型の相手には「この歯ブラシを使えば、歯茎まで健康になります」というような「〇〇になります」という相手の方向性に合わせた言葉を使うことで、相手の購買意欲が増すのです。
仕事においても、相手が問題回避型の言葉である「〇〇を避けたい」や「〇〇になりたくない」というような言葉を使うことが多ければ、相手に何かを教える際「リスク回避するために、〇〇したらいいよ」等の言葉で相手に合わせて伝えていきます。
また、「〇〇したい」や「〇〇になりたい」のような目的志向型の言葉を使うことが多い相手には「成功するために、〇〇したらいいよ」等の言葉で相手に合わせていきます。
場面ごとで、相手に合わせた言葉がけを行うことで、相手との距離感が縮まるだけでなく、相手のモチベーションまでも上げることが可能となるのです。
②スコープ
スコープとは何か。「その人が何かを把握したり、言葉にする時に、効率よく処理できる情報の大きさのこと」です。
- 【スコープのパターン】
- 全体型:物事の全体像や概要をとらえて物事を進めることを好む
- 詳細型:物事の細かい情報を扱うのが得意
人に道を聞かれ、道順を説明する時を例に見ていきたいと思います。
全体型の人は、「この道をまっすぐ行って、大通りに出たら右に曲がるとあるよ」のように伝えます。
それに対して詳細型の人は、「このすずらん通りを3分くらい進むと、白山通りという大通りに出ます。右手にセブン〇〇〇ンがあるので、そこの角を右に曲がると、隣にマツモト〇〇シがあって、そこを真っすぐ進むと、直ぐ右手に提灯が表にある居酒屋があるので、その隣です」のように伝えます。
よくある出来事として、全体型の人が詳細型の人と話すと「もっと全体像を話して欲しい」と思ったり、「細かすぎて、イライラする」となったりします。
逆に詳細型の人が全体型の人と話すと「もう少し詳しく話して欲しい」や、「いい加減すぎて、腹が立つ」となったりするのです。
感じ方の大小はあっても、皆さんもそのような感覚になった経験があるのではないでしょうか。
そこで仕事等においては、相手の話し方から、相手が全体型であればこちらも、できるだけ全体像を伝えるようにします。
また、相手が詳細型であれば、できるだけ詳しく伝えるようにします。相手のスコープに合わせることにより、相手のモチベーションを下げることなく、話がスムーズに伝わるのです。
③選択理由
選択理由とは何か。「何か物事を進めたり、決断するときに、どのようなやり方を好むかということ」です。
- 【選択理由のパターン】
- オプション型:様々な可能性や、選択肢があることを好む。
- プロセス型:順序良く、正しい方法で進めることを好む。
具体例として、仕事における会話において、
オプション型の人は、様々な可能性を考えるので、話がよく飛びます。よって、プロセス型の人から見ると、「話が飛んで、分かりにくい。しっくりこない」となります。
プロセス型の人は、順を追って正確にやろうとするので、オプション型の人から見ると「融通が利かない、型にはまってつまらない」となることがあります。
ここで知っておきたい事として、LABプロファイルの権威である、シェリー・ローズ・シャーベイ氏が「何か新しいことを学ぶときには、プロセス型がいい」と言っていることです。
日本でも、守破離という言葉があるように、まずは順序立てて、基礎から一つひとつ学んでいくことが大切なのです。
【ポイント】
オプション型の人に対してはティーチングのスタート時に、伝え方を工夫すると効果的です。
「何か新しいものを学ぶ時は、守破離の守がとても大切。そして、その守、基本をしっかり身に付けることで、選択肢、可能性が広がり、色んな事ができるようになるのです」と伝えると、オプション型の人のモチベーションを上げて、進めることができるのです。
ちなみに、プロセス型の人は、何も特別なことを言わなくても手順通りに学んでくれます。
今回は、3つのカテゴリー、4つのパターンについてお伝えしました。
人によって影響を受ける言葉が違うことを以上の例から、実感されたのではないでしょうか。自分が影響を受ける、「いいな」と思う言葉が、実は相手によっては、モチベーションを下げてしまう可能性があるということです。
相手のパターンを知り、相手に影響を与える言葉を使うことで、相手のモチベーションを下げない、影響力のある人になることができるのです。
4-3.③ 信頼関係を築く(ラポールスキル)
ティーチングを成功させるために、短時間で信頼関係を築くことは、とても大切です。そして、短時間で信頼関係を築く人たちの共通点の1つは、「相手に合わせることから始める」ことです。
では、「合わせる」をどのように意識的に作っていくのか。その具体的なやり方を見ていきましょう。
①ミラーリング |
ミラーリングとは、「見えるもの」を相手に合わせていくことです。 また、「姿勢」を合わせることも比較的やりやすい方法です。椅子に腰かけている時、相手が背もたれに寄り掛かっているのであれば、同様に寄り掛かる。前のめりに座っているのであれば、同様に前のめりになる、というやり方です。 ここで大切なのは、相手の変化に気づいたら、慌てずゆっくりと合わせていくことです。 |
②マッチング |
マッチングとは、「話し方」を相手に合わせていくことです。 また、「話すスピード」。相手の話すスピードが遅ければ、スピードを遅くし、早ければ早くしていきます。 よくある例として、相手の話すスピードが遅いにもかかわらず、そのことに気づかず、早いペースで話し続けてしまい、相手がついてくることができなくなってしまうことです。 結果として相手に、「置いていかれた」というような感覚を与えてしまい、信頼関係を作れなくなってしまうのです。 |
③バックトラッキング |
バックトラッキングとは、相手が話した「事実や感情を繰り返すこと」です。 また、感情を繰り返すとは、「先週、ディズニーランドに行ってきて、楽しかったんだ」という相手の話に対し、「楽しかったんだね」と返すことです。 事実や感情を繰り返しているので、聞き手は「そうそう」という頷きの反応とともに、話を聞いてもらえているという気持ちになるのです。結果、短い時間で信頼関係ができるのです。 これら3つを実践すると、初対面の方はもちろん、信頼関係をさらに深めたいという相手からもより信頼を得られるようになるのです。 |
4-4.④ 相手視点の言葉で伝える(ポジション・チェンジ)
受け手がどのように受け取るか、相手の立場、つまり「他者の視点」に立つことは、教える上でとても効果的です。そこで、ここでは相手の立場になって考える具体的なやり方、「心理学NLPのポジション・チェンジ」についてお伝えしていきます。
やり方は、相手の状況を考え、相手がその状況の中で実際に見ているもの、聞いている声や音、感じている感情をイメージします。そして、あたかも自分自身がその状況の中にいるように意識していきます。
その状況で、あなただったら、どのように捉え、動いていくかを言葉にしていきます。
そうすることにより、相手の立場に立つことができ、共感力が高まります。その上で、相手の理解度や、成熟度に合わせて教える量を調整したり、使う言葉を簡単にしてみようと考えることができるようになるのです。
なぜポジション・チェンジをすることが効果的かというと、「人の認識は、同じ情報を前にしても、知覚位置により異なる」という作用が働くからです。つまり、視点を変化させることで、気づきが生まれるということです。
ポジション・チェンジをして、他者視点で物事を考えることで、相手への思い込みを緩めたり、客観的な視点や違った視点を持ち、自分ごととして捉えることができるようになるのです。
4-5.⑤ 上級編:集団へのティーチング5つの方法
ここからは、さらに詳しく学びたい方のために、上級の内容についてもお伝えしていきます。それは、集団を巻き込み、プラスの印象を与える効果的な話し方についてです。
これらを行うことで、あなたもスピーカーとして一目置かれる存在になることが可能となります。
①すべての感覚の言葉、LABプロファイルの言葉を散りばめる |
集団に対し、言葉を響かせるポイントは、4-1.で紹介した心理学NLPの「VAKモデル」や、4-2.LABプロファイルの「相手に響く言葉」を意識的に散りばめていくことです。 例えば、「VAKモデル」であれば『今回のプロジェクトが成功することで、取引先の笑顔が見えるとともに、ありがとうという称賛の声が聞こえ、さらにやりがいを感じることができるだろう』のように、「見える、聞こえる、感じる」という言葉を入れていきます。 そうする事で、集団の中にいる、それぞれの言葉が心地いい相手に、響かせることができるのです。 同様に、「LABプロファイルの方向性の言葉」であれば『このやり方をみんなが習得することで、ミスを回避できるし、売り上げ目標も達成できる』のように「回避できる、達成できる」を散りばめるのです。 |
②同意を取りにいく |
集団に合わせるためによく使われる最初の手法は、集団にとっての事実を繰り返し伝えていき、YESの反応をとっていくことです。「YESセット」とも呼ばれます。 数年前までお昼の時間帯で放送されていた、「笑っていいとも!」において、司会のタモリさんが「今日は暑いですね!」に対してお客さんが「そうですね」と返します。 ここで集団にとっての事実は「暑い」です。他にも天気や、日本全体の行事等、数回繰り返すことで、集団から「そうそう」という反応が得られ、共通点を持つ存在として、自然と信頼関係ができてくるのです。 なので、話のスタートに3つ、4つ程度の事実を伝えて集団の「そうそう」という同意を取りにいきます。 |
③信頼関係が築けるまでは、断定の言葉は極力使わない |
人が何かを取り入れたり、決断したりする際、大きく2つのタイプに分かれると言われています。それは、「自分自身で決める人」と、「周囲の言葉で決める人」です。 どちらが良い、悪い、というわけでなく、まずはそれを知る必要があるのです。 そして集団に対して、そのどちらにも響かせるためには、断定の言葉は極力使わないことが重要となります。特にこの場合、「自分自身で決める人」の賛同を得られない可能性が大きく上がってしまうからです。 そこで、言葉の最後に『このようにやることをお勧めします』のように、相手に選択権がある言葉を使うことをお勧めします。 グループとの関係性が出来上がったり、相手の抵抗を感じなくなるまでは、このように意識することで伝わる効果が大きく変わってくるのです。 |
④グループに影響を与える人を数名見つけ、その人たちにミラーリング、マッチングを行う |
集団の中には、グループに影響を与える人が何人かいます。集団のリーダーや、周りからの信頼がある人等です。 その方を見つけ、その人たちに、個人に対する方法でお伝えした、ミラーリングやマッチングを行います。そうすることで、影響を与える人との信頼関係が築け、さらにそこから影響を受けている方へと広がっていくのです。 |
⑤1センテンスに1人を見ながら話す |
集団に対する、やりがちな話し方の1つに、全員を見ようとして、目や首を頻繁に動かすことがあります。 実はこのような動きは、落ち着きがないように見え、聞き手の集中力を無くし、結果として集団との一体感を無くしてしまいます。 では、どうすればいいか。1文、1センテンスに対して、集団の中の1人を見て、話すことが重要です。そして、④でお話しした「グループに影響を与える人」に対して行うとより効果的になります。 |
5.ティーチングに役立つ学びとは?
ティーチング力を高めるために、どのような学びをしていけばいいのか、注意点及びポイントをお伝えしていきます。
今までの一般的な書籍や講座の中には「相手の立場に立つことは大切」とあっても、「具体的にどのように行うか」というやり方、つまりHOWの部分が無かったり、表面上だったりするケースが多く、結果や成果につながらないということがありました。
理論や、頭ではわかっていても、それを実際に日常で行えるかどうかは別になってしまうという経験もあるのではないでしょうか。何より筆者である私自身がそうでした。
ですので、受講する講座によっては「仕事やビジネスで起こるリアルな課題に対応できないケースがある」というのが注意点です。
その結果、別の講座を学び直すなど、費用が重なり、費用対効果が下がるケースがあります。そこで、こうしたことを回避するため、手に入れたい成果に合わせたお勧めの講座を、紹介していきたいと思います。
ここでは、ティーチングを学ぶ上で有効な2つの要素
- 信頼関係の構築
- 相手に影響を与え、モチベーションを上げることができる言葉の使い方
という視点から、お伝えしていきます。
※ティーチング力を高めるための、信頼関係をつくる力、相手に影響力を与える言葉の使い方などを、総合的に学びたい方には、実践心理学NLPをお勧めしています。
NLPは、ティーチングはもちろん、コミュニケーションに関する学び、コーチングに関する学び、そして、自己とのコミュニケーションによって、セルフイメージを高める方法を学ぶことができます。
さらに、NLPプラクティショナー認定コースは、その中の1日を使って、LABプロファイルの内容も同時に学べるコースです。
※詳しくはこちらをご覧ください。
また、LABプロファイルは書籍もあります。まずは書籍から学びたいという方は、こちらをご覧ください。
部下が率先して動くようなコミュニケーションを取れたら・・・
部下のアイディアを無限に受けたいという気持ちはあるが、方向性が違うとき、どうやって伝えると良いのか悩んでしまう。そのようなとき、この本をオススメします。
LABプロファイルの LAB は、Language and Behavior の頭文字をとったもので、言葉と行動の関係性を分析した学問です。相手に届く・影響を与える言葉選びについて書かれています。
人を動かしたいときに、具体的にどうするのか?現場での事例をイラスト付きで示しながら、読んですぐに実践しやすいよう書かれています。
- 人が発する言葉に、行動パターンや趣向が出ることがわかると、マネジメントで使う言葉選びを変える、という選択肢が持つことができ、役立つと思います。
- また部下だけでなく、上司向けの内容もあります。『”前例がない”と渋る上司からOKを引き出す切り出し方』のような興味深い方法も載っています。
- 上司と部下の間で板挟みとなっている方にも助けとなる部分があるでしょう。あなたの心のなかに浮かぶ『なぜだ?』の答えが、相手が使う言葉から、わかってくると期待できます。
この記事でご紹介したすべての具体的なやり方は、心理学NLPの中から、ほんの一部を紹介したものに過ぎません。
心理学NLPは、教師、講師、コンサルタント、コーチ、セラピスト、マネージャー、経営者など、世の中のあらゆる「人に接する人」が伝え方のレベルを高めるために学びに来ています。
それくらい、あなたのレベルアップに役立つものです。
なぜなら心理学という視点から、理論だけでなく、具体的なやり方まで学べ、日々の生活での活用方法を、講座の中で体験、実践できるからです。
6.まとめ
今回は、ティーチングについてお話を進めてきました。
ティーチングとは「知識や経験が少ない人に対して、必要な情報やスキルを言葉にして伝え、相手が同じことをできるようにすること」でした。
重要な点は2つ
- 信頼関係を短時間で築くこと
- 意識的に相手のモチベーションを上げる伝え方をすること
これらを意識し、場面に合わせてティーチングの3つの役割、「教える役割」「アドバイスをする役割」「気づきを与える役割」を使い分けることで、誰にでも効果的なティーチングができるようになるのです。
【出典・参照元】