リスキリングとは、時代の変化で必要となる
新しいスキルを身につけることです。
新しい仕事に就いたり、
業務に応用することを目的としているのが特徴で、
特に人材育成やキャリア開発の観点から、注目が高まっています。
ここ数年で仕事のやり取りが、
メールからチャットに変化したり、
オンライン会議や、
キャッシュレス決済が当たり前になったように
私たちやビジネスを取り巻く環境は、
目まぐるしく変化しています。
こうした変化に対応できないと、
リストラや倒産といった危機的な状況が待っています。
危機的な状況を回避しながら、
ビジネスを成長・拡大していくための一つの方法が
新しい技術やスキルを素早く取り入れて、社内を変化させていくこと。
変化の激しい時代をたたかう企業・従業員にとって
リスキリングは、一種の生存戦略と言えそうです。
この記事では、リスキリングの意味や
メリットなどの基本に加え、
学んでおきたいスキルも解説していきます。
後半では、リスキリングを成功させるために
企業と従業員が押さえておきたいポイントも
ご紹介しますのでぜひ最後までご覧ください。
目次
1.リスキリングの基本知識
まずは、リスキリングの意味や目的を確認していきましょう。
似ている言葉とも比較して、特徴を捉えていきます。
そして、リスキリングを導入したり、
取り組んでいくメリットや、リスキリングの進め方についても、ポイントをまとめました。
1-1.リスキリングの意味・目的
リスキリングとは、時代の変化によって必要となる、新しいスキルを身につけることです。
特に、デジタル化やロボット化、AI化が進むなかで、仕事を失わないように、新たなスキルを身につけていくことを目指します。
経済産業省の資料では、次のように定義されています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
(「リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」より引用)
似ている言葉とも比較して、目的や特徴を整理していきましょう。
言葉 | 意味、目的など |
リスキリング | 時代の変化で必要となったスキルを働きながら身につけ、新たな仕事や業務に活かすこと。 社内の配置転換にも利用されます。 |
リカレント教育 | 働く→学ぶ→働く→学ぶ…のサイクルを回すこと。 リカレント(recurrent)には、循環という意味があります。 |
アンラーニング | すでに持っているスキルのうち、状況の変化などで、有効でなくなったスキルを手放し、新たなスキルを身につけること。 |
アップスキリング | いわゆるスキルアップのこと。 今の業務についてのスキルを高めるため、キャリアアップや専門性を高めることが目的です。 |
アウトスキリング | リストラの対象(予定)者に対して、新たなスキルを身につけさせること。 退職前にリスキリングの機会を与え、再就職をサポートします。 |
リスキリングの目的や特徴を、ご理解いただけましたでしょうか。
次に、企業がリスキリングを導入したり、従業員が取り組むメリットについてお伝えしていきます。
コラム
<リスキリングが国内外で注目されている背景>
①ダボス会議
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にて、
「リスキリング革命」というセッションが
2018年〜2020年の3年連続で開催されました。
第4次産業革命によって、1億3300万人分の新たな仕事が生まれると同時に
7500万人が新技術で失業する可能性があると発表されています。
(コロナ禍を経て、新たに生まれる仕事は9700万人分、失業者の見込みは8500万に修正されました。)
そして、2030年までの10年間で、世界10億人に対して
リスキリングを行うとの宣言もなされ、話題になりました。
②岸田首相の所信表明演説
2022年秋の臨時国会にて、岸田首相は
「リスキリング」の支援を、今後5年間で
1兆円に拡充すると表明しました。
翌日の新聞では、一面にこの話題が掲載されることに。
2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされ、国内でも注目が高まっています。
1-2.リスキリングのメリット
リスキリングに取り組むことは、企業にとっても、従業員にとっても、メリットがあります。
それぞれの視点から、確認していきましょう。
1-2-1.企業がリスキリングを導入する2つのメリット
企業の視点では、主に次の2つがメリットとなります。
①採用コストの削減
リスキリングは、新規採用と比べて、6分の1程度のコストで実施できると試算するデータもあります。
そもそもデジタル人材の採用は難しく、仮に採用できたとしても市場でひっぱりだこな人材のため、条件が良い企業が見つかれば、退職してしまうリスクもあります。
リスキリングの成果が出るまでには、1年~1年半かかるとも言われています。
それでも、自社の製品やサービスに対して知識があり、社内の文化を理解している、既存の従業員に対してリスキリングを行う方が、低コストで社内のデジタル化などを実現できるのです。
②デジタル化の促進・新たな技術をスピーディに現場へ応用できる
デジタル化などの知識・スキルを、社内で誰も持っていない場合、採用活動を行っている間は社内のデジタル化が進まない、ということにもなりかねません。
社内の情報や状況をわかっている既存の従業員に、スキルを身につけてもらった方が、現場への応用も早く、結果的に社内のデジタル化が促進されたり、新たな技術の導入に繋がっていきます。
1-2-2.従業員がリスキリングに取り組む3つのメリット
従業員の視点では、主に次の3つがメリットです。
①キャリア開発、雇用の維持
企業に必要とされるスキルを身につけることで、昇進や抜擢の機会が増えたり、リストラの対象から外れることにも繋がります。
②業務として学ぶことができる
何かを学びたいと思っても、勤務時間外で取り組むのは、継続が難しかったり、ハードルが高い場合もあります。
リスキリングは、人材育成の制度として導入され、業務として取り組みますので、学ぶ場や実践の場を確保しながら、スキル獲得を目指せます。
③リスキリングのスキル・経験が身につく
将来も次々と、新たな技術が出てくると予想できます。
そしてその都度、新しくスキルを獲得していく必要があります。
新しいスキルについて、自分で学び、身につけた経験があるのとないのとでは、獲得のしやすさが異なります。
リスキリングの経験は、生涯にわたって役立つものです。
番外編
<40代・50代こそ、リスキリングが必要>
40代・50代(早い方では30代後半)になると、およそ8割の方が、ミッドライフ・クライシスと呼ばれる、精神的な不安、不調を経験されると言われています。
ミッドライフ・クライシスを乗り越えるためには、リスキリングで新しいスキルを学び、仕事を充実させること、そして自分の内面を整えていくことが必要となります。
このメディアサイトの運営元である
NLP-JAPANラーニング・センターは、心理学NLPの総合スクールです。
当スクールにも、一度、人生の棚卸しをしようと
40代、50代の方が、たくさん学びに来られています。
心理学NLPは、別名「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれる実践心理学で、人生の目標やミッションを明確にしたり、心のマイナス面を改善したり、自分の内面を整えることに使えるスキルが豊富にあります。
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1-3.リスキリングを進める4つのステップ
リスキリングの流れを簡単に記すと、次のようなステップとなります。
- ステップ1:必要なスキルと対象者を決定する
- ステップ2:プログラム・教材を決める
- ステップ3:実際に取り組んでもらう
- ステップ4:習得したスキルを現場で活かす
新たなスキルを学ぶだけでなく、
実際の仕事や現場で活用していくことがリスキリングの特徴です。
スキルを学んだ後に、どのように業務に活かしていくかまで、計画に盛り込む必要があります。
このポイントは3章でお伝えしていきます。
そして、ステップ1の何を学ぶかについては、次の2章でご紹介していきますので、続きをご覧ください。
2.リスキリングで何を学んだら良いか?
ダボス会議では、次の3つをコア領域として
リスキリングを推進しているようです。
- 1:デジタル技術
- 2:ソーシャル・スキル
- 3:個人の能力開発(自己啓発)
また選定の際には、企業が必要とするスキル、
そして対象の人材に身につけて欲しいスキルを元に
対象者とすり合わせて、合意を得ていくことが前提となりますので、
ここも押さえておきましょう。
2-1.デジタル技術
デジタル技術は、その名の通りデジタル化、DX化で求められるスキルです。
デジタル技術については経済産業省が、
「第四次産業革命スキル習得講座(Re スキル講座)」として、次の3つの分野を認定しています。
- AI、IoT、データサイエンス、クラウド
- 高度なセキュリティやネットワーク
- IT利活用
講座の認定基準は、高度で、専門的なスキルが身につく内容とのことですので、この中から、必要なスキルを選んでいくのも良さそうです。
具体的には、プロダクト開発に必要なプログラミングやデータ分析、ディープラーニング、サイバー攻撃への対策といった講座があります。
なお、Re スキル講座の受講は、一定の基準を満たすと、学びに必要な費用の助成もあります。
2-2.ソーシャル・スキル
ソーシャル・スキルとは、簡単に言うと人間関係で必要なスキルです。
どれだけデジタル技術が進んでも、人と人との関わりはなくなりません。
人と良好な関係を築いていくことは、仕事の円滑さにも影響しますし、社会という大きなコミュニティを営むためにも欠かせません。
具体的には、次のようなスキルがソーシャル・スキルです。
- コミュニケーション能力
- 対人関係を円滑にするためのスキル
2-3.個人の能力開発
このテーマには、例えば論理的思考や傾聴(アクティブリスニング)、リーダーシップに関するスキルなど、自己啓発に必要な要素が全て含まれます。
- マーケティング
- マネジメント
- 語学
- 目標達成、問題解決の能力 など
なお、心理学NLPには、コミュニケーション能力やリーダーシップを高めたり、
目標達成・問題解決の能力を高める学び、スキルも豊富にあります。
2-2.2-3.でご紹介したスキルも身につけられるため、当メディアサイトの運営元であるNLP-JAPANラーニング・センターには、
ビジネスパーソンを始め、経営者、医師・看護師、弁護士など幅広い職業の方も学びに来られています。
もし心理学NLPにご興味がありましたら、以下の情報をご覧ください。
3.リスキリングを成功させるポイント
リスキリングを成功させるために、
企業と従業員、それぞれが押さえておきたいポイントをご紹介します。
3-1.企業がおさえる3つのポイント
①スタンスや方向性を明確にする
企業としてリスキリングにどれくらい力を入れているのかであったり、ビジョン・事業構想に基づいて獲得スキルを提示することで社内の理解が深まり、
従業員が安心してリスキリングに取り組めるようになります。
②制度・仕組みを整える
リスキリングは業務の一環ですので、業務時間内に学べるようにしていきます。
そして、学習プログラムや教材に加え、リスキリングでは、学んだ新しいスキルを現場で活かしていくことが重要となります。
社内インターンシップなどで一時的に配置替えをしたり、副業でスキルを試してもらうなど、学んだ内容を試せる環境も整えていく必要があります。
③対象者のフォロー
リスキリングを実施する際には、対象者と合意できていることが前提となります。
その上で、社内や部署の理解・協力を得て、学びやすい環境を整え、定期的に面談や1on1などを活用して、モチベーションを維持・向上できるようにサポートします。
また、ベテラン従業員を対象とする場合には、新たなスキルを獲得することで、これまでに培ってきた専門知識やスキルを昇華できる点を理解してもらうと進めやすいでしょう。
3-2.従業員が押さえる2つのポイント
①持っておきたい視点・姿勢
新しいことを学んだり、挑戦するときには、次のような視点・姿勢を持っている方が、
上手く行きやすいと言われています。
- 未来の在りたい姿を明確にする
- 素直、謙虚な心
- 柔軟性
- 継続すること
②セルフイメージ
スキルをスムーズに身につけられるか、そして、身につけたスキルを発揮できるかどうかには、セルフイメージ(心の状態)が影響しています。
セルフイメージとは、簡単に言うと「自分自身のことをどう思っているか」ということ。
心理学の世界では、人生の9割に、
セルフイメージが影響していると言われています。
例えば、
どのような友人を持つか、どんな人間関係を築くか
仕事ができるかどうか、さらには収入面についても
実はあまり知られていませんが、セルフイメージが影響しているのです。
「自分は大丈夫、うまくいく」といった、
良いセルフイメージを持っている人は
その思い込み通りに、あらゆる能力を発揮しやすく
逆に「自分はダメだ、どうせ失敗する」といった
低いセルフイメージを持っていると
その思い込み通りに、うまく能力が発揮できず
結果としてダメな状況に陥りやすくなります。
セルフイメージを高めるには、自分と向き合い、
ときには自分のマイナス面を改善する必要も出てきます。
セラピーやカウンセリングの分野からスタートした心理学NLPには、セルフイメージを高める方法がたくさんあります。
もしご興味がありましたら、以下をチェックしてみてください。
参考書籍・記事
- 『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』
- 『実践リスキリング』
- 【ダボス2023リポート】リスキリング革命で目指す、人的資本の向上と働き方の未来
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