
「良きリーダーとなってチームや組織のパフォーマンスをあげたい」
この記事では、そんなあなたにリーダーの資質に関する新たな視点をご提供します。
リーダーの資質を学ぼうとすると、書店やネットにはたくさんの本や情報があります。
例えば、
海外の優れた経営者、例としてはスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのリーダーシップ論、国内の経営者では、稲盛和夫や孫正義、または松下幸之助に学ぶリーダーの資質。
また学問としてのMBAのリーダーシップ論やサーバントリーダーといったメソッドとしてのリーダー論。さらには、
成功哲学のナポレオン・ヒルの調査によるリーダーの条件や、7つの習慣のスティーブン・R・コヴィーのリーダーに関する見解。古くは孔子に学ぶリーダー論、また禅に学ぶリーダーの資質といったような「求められる資質」と同時に、「失敗する条件」など数多くの考えがあります。
優秀なリーダーは、誰よりも勉強し学び続けているのが常識ですが、時には過去の実績、他のチームのやり方、枠を広げて業界No.1の他社をベンチマークし、さらにそれを越えた他業界をも視野にいれながら、ミッションの実現に向けて学習し続けています。
このように目指したい理想のリーダーの資質を学び、ベンチマークすることは重要です。
そこでこの記事では、そういった個人を凌駕するリーダーのモデルを、時代を越え、国を越えて語り継がれる神話の登場人物から、リーダーにとっての普遍的ともいえる重要な資質をご紹介します。
なぜ神話は、国や文化を越えて語り継がれるのか。
そして、何が人を惹きつけ魅了し、語り継がれる伝説の要因となるのか。
ここを学ぶことは、あなたのチームの目標やプロジェクトの達成はもちろん、
あなたのリーダーとしての大きな力を生み出す新たな視点になるでしょう。
この記事の内容は、そのベンチマークを「英雄の旅」と呼ばれる普遍のストーリーから学び、そこに登場する主人公たちから、人を動かし、影響を与え、プロジェクトを達成するキャラクターを心理学の「アーキタイプ」という概念をもちいてご紹介しています。
ある意味これまでにない切り口でのリーダー像は、あなたの理解をより深め、より広げ、多様性をもった学びが生まれてくることと思います。ぜひ参考にして、あなたのプロジェクトや目標を達成するためのリーダーの資質を、普遍の力から学び取ってください。
目次
1.リーダーに必要な3つの資質
リーダーに必要な資質は以下の3つです。
■3つの資質
- 強さ(パワー、勇気、覚悟)
- 慈悲(優しさ、やわらかさ、オープンマインド)
- 陽気さ(ユーモア、創造性、遊び心)
この3つがあることによって、組織やチーム、プロジェクトにたずさわる関係者の信頼を得ることができます。また柔軟性と創造性にあふれたプロセスを進み、目標の達成やミッションの実現が可能になります。
これはNLPの考え方であり、実はこの3つの資質は「神話」「心理学」を融合して見出したものです。
あなたがロールモデルとして掲げるリーダーを思い描くと、この「強さ」「慈悲」「陽気さ」という言葉をシンボルにした3つの資質が、程度の差こそあれ、なにかしら宿っていることが想像できると思います。
ではこのような普遍的な資質はどのように導かれたのか、その源流を第2章でご紹介します。
2.3つの資質はどこから来たか?3つの資質の源流
今回の3つの資質は、長い歴史を越えて語り継がれる神話、人類に共通する心理学、そして卓越の研究と呼ばれるNLP(神経言語プログラミング)から抽出しています。
2-1.源流①「神話」~英雄の旅(ヒーローズジャーニー)
3つの資質の源流の一つが、神話を研究した「英雄の旅(ヒーローズジャーニー)」という考え方です。
神話学者のジョーゼフ・キャンベルが、文化や宗教といった背景を超えて、その国々で語り継がれる神話を研究しました。
そこでわかったのは、多くの物語にはある決まったテーマが繰り返されている、ということでした。そしてそれが人類をより深い部分で結びつけるようなテーマであることに気づき、語り継がれる物語には、共通して流れる普遍的なストーリー構成があることを見出しました。
それを「英雄の旅(ヒーローズジャーニー)」と言います。
背景や場面設定が違っても、語り継がれる普遍の物語は、以下の8つのステップです。
- 天命を知る
自分のミッションに気づく、自分のミッションと対峙する。 - 旅の始まり
自信や力不足といった内面的な恐れ、周囲の不調和などによる弊害が起きる。 - 境界線
その不安や迷いをかかえながら、勇気をもって、未知の領域に一歩を踏み出す。 - 守護者と出会う
境界線を越える勇気をもつことで、メンターや師、または仲間に遭遇する。 - 試練(悪魔)に遭遇する
悪魔は他者だけでなく、「お前は英雄ではない」「お前は無力だ」といった自分の「影」の声の場合もある。 - 変容
悪魔を倒すために主人公が変容する。 - 課題を完了させる
- 故郷へ帰る
宝(何かしら価値があるもの)をみつけ帰還する。
このステップが、映画「スターウォーズ」に取り入れられたのは有名な話で、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリーポッター」、また女性のストーリーでいえば、「オズの魔法使い」などにも見受けられます。
その道は悪戦苦闘しながら、時には誰かのやさしさに触れながら、時にはユーモアをもちいながら、
一つひとつの課題を乗り越えていきます。
このプロセスは、チームや組織が目標達成する過程と同じです。
神話だけでなく、そして映画だけでもなく、私たちの仕事や人生も同様の物語として考えることができます。
神話は、時代を越えて語り継がれる、魅力があります。
その魅力の秘訣が、先にご紹介した人の成長を意味する8つのステップです。
語り継がれる仕事の物語を生み出すリーダーを目指したいのであれば、あなたの現状がどうであれ、このステップを活用しない手はありません。
あなたがリーダーとして卓越した成果や結果を創りたければ、まずはこの旅をリーダーであるあなた自身にあてはめていくことです。そして今、どの段階にいるのかを理解しておくことが重要です。
2-2.源流②「心理学」~アーキタイプ
2つ目の源流が心理学のアーキタイプ(元型)と言われる概念です。
人を魅了する物語には、【英雄の旅】の8つのステップ同様、個性や在り方も含め、多くの人の共感を生み、時には愛され、時にはカリスマとして登場する主人公がいます。そのキャラクターは、見る人の心を鷲掴んでいきます。
ここでご紹介するのが、心理学者ユングの考えがもとになった、アーキタイプ(元型)と呼ばれる考え方です。アーキタイプとは、人が本来持つ普遍的なエネルギーの象徴のことです。
先の「英雄の旅(ヒーローズジャーニー)」では、以下の12のアーキタイプが紹介されています。
アーキタイプ | 特徴やシンボルとなるキーワード |
---|---|
幼 児 | 人を無条件で信頼する。楽観主義。あるがままを信じる心。 |
孤 児 | 自立心、共感、何かを捨て現実を生きる。 |
戦 士 | 勇気、自制心、スキル、パワー。 |
援助者 | やさしさや思いやりをもつ。犠牲を払ってでも他者の世話をする。 |
探求者 | 人やコミュニティから離れ、より深遠な「何か」を探求する。 |
求愛者 | 献身、情熱、陶酔。愛する人を見つけて自分を知ろうとする。 |
破壊者 | 虐げられ、抑圧された怒りや憎しみといった影の力。 |
創造者 | 確固たる真のアイデンティティを目覚めさせる。使命感をもつ。 |
統治者 | 責任感、表現力、統治力にすぐれ、秩序を生み出す。 |
魔術師 | 癒しや統合で人や場を変容させる。 |
賢 者 | 英知。助言や忠告を与えて、主人公を正しい方向へ導く。 |
道 化 | 楽しむ、自由、活力、喜び、遊び心をもつ。 |
人の無意識の中にある象徴ですから、何かの物語を思い出しても、多くの場合が先にご紹介したアーキタイプにあてはめられると思います。
(「賢者」の例で言えば、スターウォーズのヨーダのような存在です)
なぜ英雄の旅に登場する人物たちに、私たちは共感してしまうのか。
これも英雄の旅のストーリー同様、ユングの理論をもとにすれば、それは無数の世代の体験を経て生まれた、私たち誰もが持つ、全人類の無意識に普遍的に存在するリソースであり、エネルギーの象徴だからです。
役職やポジションの力で人が動くのではなく、深い部分で深遠な共感をもたらし、
関わる人の奥深い無意識に影響を与えるリーダーとなる。
この記事では、一時的で表面的なリーダーの資質を学ぶのではなく、もっと含蓄のある、奥深い意味をもったリーダーの資質を提案したく、実践心理学と呼ばれるNLP(神経言語プログラミング)の視点でまとめています。
2-3.神話と心理学を融合→NLPのリーダーの資質
NLPは卓越した人のパターンをみつけ、誰でも同様のパフォーマンスを生み出せるようにした卓越の研究のことで、「実践心理学」や「脳の取扱説明書」と呼ばれているものです。
今回のテーマであるリーダーの資質についても、同様の研究が進んでいます。そして先に紹介した
語り継がれる神話の「8つのステップ」、そして心理学の「アーキタイプ」を融合して、リーダーには3つの資質が重要であることを見出しました。
英雄の旅において、リーダーとしてものごとを成し遂げるために欠かせないパターンであり、エネルギーでもある3つの資質、それが「強さ」「慈悲」「陽気さ」です。
3章では3つの資質の特徴についてご紹介します。
参考文献
人を覚醒に導く史上最強の心理アプローチ NLPコーチング
ロバート・ディルツ (著), 足達大和 (監修), 横山真由美 (翻訳),出版社:GENIUS PUBLISHING
3.NLPのフレームに学ぶリーダーの3つの資質の特徴
ここまでお伝えしてきた「英雄の旅」の普遍的なストーリー、そして心理学にもとづくアーキタイプという考え方を前提に、NLPで伝えられている卓越した結果やパフォーマンスをあげる主人公、つまりリーダーの資質である3つの詳細をご紹介します。
それぞれの特徴をお伝えし、私の方でいくつかの問いを用意しましたので、その問いと向き合いながらリーダーに求められる資質を準備してください。
3-1.強さ(パワー、勇気、覚悟)
アーキタイプで言えば、「戦士」のイメージです。
パワーや勇気、覚悟をシンボルとする「戦士」の特徴は以下のようなものがあります。
- 邪悪な力(不当な権力)や不遇な状況と向き合うことができる。
- 公平に物事をみて、戦うために立ち上がることができる。
- 戦うことで、自分だけでなく、大切な人や弱者を守る。
- その力は、自分を優位にすることが目的ではない。
- 充分な知恵とスキル、そして立ち上がるための勇気と自制心を身につけようとする。
これは男性だけのものではなく、フランスのジャンヌダルクのような女性の中にもその資質はあると考えます。
また先にご紹介した【英雄の旅】では、「レベル」という考え方があるので、ご紹介しておきます。
戦士のレベル
レベル1: 自分や他人のために闘って勝利を収めるか優位に立つ。(限度は設けない) レベル2: 自分や他人のために理念をもって闘う。
ルールを守って正々堂々と闘いや競争に挑む。利他的な目的を持つ。レベル3: 率直な自己主張。(個人的利益のためだけでなく)本当に大切なもののために、闘いや競争を行うといった暴力をほとんど(あるいはまったく)必要としない。「双方が勝者となる」解決策を好む。堂々と闘いを宣言するコミュニケーションを活発にして、誠実にふるまう。
ではここで、リーダーに必要な「戦士」の資質を高めるあなたへの問いです。
じっくり向き合い、リーダーの資質を育んでください。
- あなたは、そのグループや組織をより良くするために何と向き合っているだろうか。
- 大切な人やメンバー、また組織のために立ち上がる準備をしているだろうか。
- 自分の優秀さや権力を、自己アピールのためだけに使っていないだろうか。
3-2.慈悲(優しさ、やわらかさ、オープンマインド)
アーキタイプでいえば「援助者」のイメージです。
シンボルとしては理想の母親像で、愛や思いやり、優しさややわらかさを表します。
「援助者」の特徴は以下のとおりです。
- 愛情深く、人の才能を見つけ出し、それを育てようとする
- 「自分には居場所がある」「自分には価値がある」「自分は大切にされている」という感覚を人に持たせる
- 人が安心してくつろげる雰囲気や場、環境やコミュニティをつくる
- 赤ちゃん、児童、生徒、学生と、時の流れに応じて、親との関わりが変化するように、時には教師のような指導や注意、また看護師のようなケアをする
- 最終的には、相手が自立できるように図る
この要素の典型と言えるのが、ガンジーやマザー・テレサ。またイエス・キリストやナイチンゲールといった人物が挙げられます。
女性だけでなく、男性にもその資質はあると考えます。
また先にご紹介した「戦士のレベル」と同様に、「援助者のレベル」がありますので、ご紹介します。
援助者のレベル
レベル1: 自分の要求と他人の要求の狭間で葛藤する(他人の欲求や自分に求められているもののために、自分の欲求を犠牲にする傾向がある。救済活動など)。 レベル2: 他人を気遣う行為で自身を傷つけるのではなく豊かにすることができるように、自分自身を慈しむすべを学ぶ。“愛の鞭”の使い方を習得する。他人に尽くすのではなく、力を与える。 レベル3: 子供をつくる力。身内や友人たち以外の人々を慈しみ、彼らのために責任を負おうとする意欲。コミュニティの形成。
ではここで、リーダーに必要な「援助者」の資質を高めるあなたへの問いです。
じっくり向き合い、リーダーの資質を育んでください。
- 誰の成長を望んでいるか。また、今あなたは誰を育てているのか
- 安心感や親和感といった、人が創造性を発揮できる安全な空間を作っているか
- 効果的な褒め方だけでなく、力づけとしての叱り方を心得ているか
3-3.陽気さ(ユーモア、創造性、遊び心)
最後のリーダーの資質のシンボルとなるアーキタイプは「道化師」です。
「道化」の特徴は以下のとおりです。
特徴
- 喜び、活力、旅(プロセス)そのものを楽しむ
- 禁止事項があると、やってみたい気持ちが勝り、すぐに何かを考えようとする
- 「今ここ、この瞬間を生きる」ことができる
- 好奇心や創造性がモチベーションとなり、視点を切り替えられる柔軟性をもつ
- 賢者と愚者といった異なる二面性を持つ
また先にご紹介した2つの資質と同様「道化のレベル」がありますので、ご紹介します。
道化のレベル
レベル1: 道化(人生はゲームであり、楽しむために存在する)。 レベル2: ※トリックスター(回転が速い頭は、他人を騙し、困難を切り抜け、障害物を避ける方法を見つけ、とがめられることなく真実を語るためにある)。 レベル3: 賢い道化、もしくは、阿保(人生とは今という瞬間を存分に味わうこと。生きることそのものを祝い、一日一日、瞬間瞬間を着実に生きていくこと)。
※トリックスターとは、秩序をやぶるというキャラクターとして物語に登場するキャラクターのシンボルです。映画でいえば、笑いを医療の現場に取り入れた実在の人物、パッチ・アダムスがそのイメージに挙げられるでしょう。
ではここで、リーダーに必要な「道化」の資質を高めるあなたへの問いです。
じっくり向き合い、リーダーの資質を育んでください。
- 楽しさや喜びを創造しているか、また人と共有できているか。
- 一喜一憂せず、大局的にみて、かつ瞬間を味わうことができているか
- 機転や創造性を発揮するためにどんな準備をしているか
※心理学NLPに関しては、こちらの記事もおすすめです。
4.3つの資質を強化(補足)するヒント
NLPでは、リーダーには3つの資質とそのバランスが必要と考えます。
慈悲と陽気さのない「強さ」は、暴力と攻撃で、喧嘩や争いを生みます。
陽気さや強さのない「慈悲」は、弱さや依存を生み出します。
強さや慈悲のない「陽気さ」は、表面的で排他的な快楽主義に陥ります。
上記のように3つのバランスを維持することが大切です。
以下に3つの資質の「最善の場合」と「最悪の場合」をご紹介しておきますので、参考にしてください。
■資質「強さ」
「強さ」の最善の場合は、よりよい世界のために知恵やスキルを使い、そして他者と結束します。
最悪の場合は、争いが生まれ、秩序が乱れ、孤独になります。
■資質「慈悲」
「慈悲」の最善の場合は、互いを思いやり、強みを発揮した貢献し合うコミュニティが生まれます。最悪の場合、いつまでも満足せず、貢献できないでいる自分に無価値感を覚えます。
■資質「陽気さ」
「陽気さ」の最善は、前向きなやる気やモチベーションを生み出し、達成感や喜び、そして創造性を発揮していきます。最悪の場合は、何一つ成し遂げることができません。
これらの資質、そして3つのバランス、そしてあなたの「英雄の旅」のステップを踏むことが、人を深い部分で動かしていくリーダーの始まりです。
5.まとめ
【リーダーとは、人が属したいと願う世界を創る人】
NLPの研究開発の第一人者、ロバート・ディルツは言います。
この記事では普遍的に流れる神話のストーリーと照らし合わせ、そして心理学のユングの概念を融合しながら見出した3つの資質をご紹介しました。
今回の記事を参考に、既存のフレームではない枠組みで、あなたのリーダーの資質を開花させてください。
参考文献:
- 千の顔をもつ英雄〔新訳版〕ジョーゼフ・キャンベル 早川書房
- 神話の力 ジョーゼフ キャンベル (著), ビル モイヤーズ 早川書房
- 英雄の旅 ヒーローズ・ジャーニー 12のアーキタイプを知り、人生と世界を変える
キャロル・S・ピアソン 実務教育出版 - 【サクセスファクターモデリング】セミナーテキスト ロバート・ディルツ
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