部下のマネジメントに悩む
管理職は多くいます。
昨今、ハラスメントの種類も多様化し、
さらに個人の価値観を尊重する風潮が高まる中で、
部下のマネジメントは次第に
難しくなっているのが実情です。
なぜなら、一言で
「部下をマネジメントする」と言っても、
「これが正解」という方法は無く、
あくまでも部下の数だけ正しいマネジメントの
方法があると言えるからです。
ですので、本記事では
部下をマネジメントする際の
「正しい方法」ではなく、
「最適な方法」をご紹介します。
具体的には…
- 注意!意外に陥りがちなミス
- 部下をマネジメントするうえで
これだけは絶対に押さえておきたい考え方 - 部下から信頼されるマネジメント法
これらについて詳しく解説し、
お伝えしていきます。
これらを参考にして、
部下の関わり方やマネジメントのやり方を
ぜひ振り返ってみてください。
著者:安藤 梨友(あんどう りとも) | |
男子新体操を4歳から22歳まで続け、現役中に全国大会で12回優勝した経験をもつ。 スポーツを通して、緊張と向き合い成功と失敗を繰り返しながら、克服するためには自身の過去の体験を振り返ることがヒントになることに気づいた。 スポーツと人間心理を知ることで得た、実践的な学びを広めようと執筆に臨む。 |
目次
1.注意!意外に陥りがちな3つのミス
- 部下を正しい方向に導きたい
- 部下に間違った道を歩んでほしくない
- 協力して一緒にチームの目標を達成したい など
そのような思いをもって、部下と真剣に向き合っていても、なかなか上手くいかないことがありますよね。
その場合は、マネジメントする際に陥りがちなミスを犯してしまっている可能性が非常に高いです。
本章では、そんな陥りがちな3つのミスについて、詳しくお伝えしていきます。
1-1.自分のやり方を押し付ける
マネジメントする際に、意外に陥りがちなミスの1つ目は、「自分のやり方を押し付ける」です。
ご自身の経験や体験から、
- この方法でやれば、必ず上手くいく
- このやり方だと手間がかかるし、
ミスを起こしやすい
などといった、セオリーのようなものをたくさん持っているのかもしれません。
もちろん、それらのセオリーの中には「確実にこのやり方が良い、正しい」というものがある場合もあります。
しかし、あなたと部下は、物事の捉え方も違えば、経験値も違います。
また、仕事に対して求めている価値観も異なっている場合もあるでしょう。
ですので、あなたにとって「正しい」と言えるものが、一概に部下の方にとっても「正しい」とは限らないのです。
そのため、「押し付ける」のではなく、部下に「提案してみる」という姿勢が非常に重要になってきます。
また、場合によっては、経験不足や知識が未熟なゆえに、方向性がズレた質問や提案をする部下も中にはいます。
そんな時に、頭ごなしに部下の意見を否定をして、自分のやり方を押し付けてしまうと、
部下の成長は見込めませんし、考えることを辞めてしまう可能性があります。
ですから、一方的に自分の考えを押し付けるのではなく、「なぜ、その提案を受け入れることができないのか」という理由を明確に伝えた上で、部下に納得してもらうことが大切です。
1-2.部下の意見を否定する
1-1でも少し触れましたが、「部下の意見を否定する」ことも意外に陥りがちなミスの1つです。
また、意見を否定するというのは、直接的なものだけでなく、上司であるあなたの話の聞き方や返答の仕方から、
「自分の意見を否定された」と思ってしまうケースがあるので注意が必要です。
チームの中で各々が役割を果たし、組織として機能するためには、お互いの考えや意見を共有し合うことが非常に重要になってきます。
しかし、「部下の意見を否定する上司」という印象がついてしまうと、部下が意見を言い出しにくいという環境を作ってしまいます。
ですので、部下が提案してくれた意見がまったく的を射ていないものだったとしても、
「意見を出したこと」を否定するのではなく、その意見について適切なフィードバックを伝えていく必要があるのです。
1-3.叱るのではなく、怒る
そもそも、「叱る」と「怒る」の違いはご存知でしょうか?
怒る | 自分の感情(怒りやイライラ)を相手にそのままぶつけること |
叱る | 相手のことを考えた上で、適切なフィードバックやアドバイスをすること |
要するに、「誰のために」その言葉を発しているのかが、「叱る」と「怒る」の境目になってくるのです。
部下に対して気持ちが強く入ってしまった時に、つい、「叱るのではなく、怒る」ことをしてしまうというミスはよく起こりがちです。
部下への期待や信頼が大きかったからこそ、何かのミスや間違いを起こしてしまった時に、自分の感情に任せて言葉を投げかけてしまうこともあるかもしれません。
ただ、そんな時に怒りやイライラの感情をグッと堪えて、落ち着いて指導をすることが重要なのです。
2.これだけは押さえておきたい5つの考え方
部下をマネジメントする際に、これだけは押さえておきたい5つの考え方をご紹介します。
繰り返しになりますが、部下のマネジメントは「これが絶対に正解」という方法は無く、
部下の人数だけ、その人に適したマネジメントの方法が存在すると言えます。
ですので、この章ではマネジメントの「方法」ではなく、その前提となる重要な「考え方」をお伝えいたします。
2-1.愛をもって接する
部下をマネジメントする際には、「愛」をもって接することが重要です。
なぜなら、上司も部下も、役割や組織の歯車の一部などではなく、心と感情を持った一人の人間だからです。
「愛」をもって接するというマインドでいることは、深いところで信頼関係を築いていく上で、とても大切なポイントです。
では、この「愛」とはなんでしょうか?
ここでいう「愛」とは、部下に興味や関心をもち、真剣に本気で考え尽くして、大切に思うことです。
また、このとき重要なのは、「見返りを求めない」ことです。
「私はこれだけあなたのことを考えて、教えているんだから」という考えがあると、それはあなた自身のエゴを押し付けていることになります。
そして、その考えは少なからず、部下にいずれ伝わっていくので、部下からすると
「私(部下)のためではなく、自分(上司)のためにやっているんだ」となり、信頼関係を築くことが難しくなります。
また、「愛」は好き嫌いの「好き」とは、違うこともポイントです。
部下のマネジメントに、あなたの好き嫌いや私利私欲を取り入れてしまったとしたら、公平さが失われ、組織の秩序が崩壊してしまいます。
そのため、チームや組織としての信頼関係が破綻することは容易に想像できると思います。
部下をマネジメントするにあたって重要なことは、あなたではなく、部下の気持ちや考えを尊重した上で、適切な指導をすることです。
ですので、意識のベクトルは自分ではなく、相手(部下)に向けるべきなのです。
「愛」をもって部下と接することで、一人一人の部下に寄り添いながらも、
時に優しく、時に厳しくしながら真剣に向き合うことができるので、部下との信頼関係はグッと高まるでしょう。
2-2.根気をもって接する
「根気」もマネジメントには、非常に重要な要素です。
なぜなら、マネジメントには時として…
- 部下の成長を優しく見守ること
- 忍耐強く待つこと
こうした要素が必須となるからです。
例えば、部下の中には、
「ある仕事で教わったことを、別の仕事にも応用を利かせることができる部下」
もいれば、
「教わったことはそのままできるが、別の仕事に応用を利かせることはできない部下」
もいるかもしれません。
このように、部下によって物事の理解や習熟度合いが異なったり、そもそもの物事の捉え方が違うという経験をしたことがある方も多いと思います。
つまり、同じようなマネジメントをしたとしても、その結果は必ずしも同じとは限らないのです。
そのため、「根気」を持って部下と接することで、
部下からも信頼を得ることができ、その関係性の中でより良いマネジメントができるようになるのです。
2-3.相手の反応があなたのコミュニケーションの成果である
部下をマネジメントする上で、「相手の反応が、あなたのコミュニケーションの成果である」という考えをもつことは、非常に重要です。
なぜなら、人が変えられるのは、他人ではなく、自分自身のみだからです。
例えば、部下にある仕事の指示を出していたとします。
ただし、出来上がった成果物を確認すると、かなり方向性がズレてしまっていた、という場面を想像してみてください。
ここで下記のような違いが生まれる可能性があります。
①他人(相手)を 変えようとする場合 | この人は仕事ができないと評価を下げる |
②自分を 変えようとする場合 | 自分の伝え方が悪かったかもしれないと見つめ直して、改善する |
同じ出来事が起きた場合に、①と②のどちらの上司についていきたいと思いますか?
ほとんどの人が、②の上司についていきたいと思うでしょう。
「成果が出る人は、自分を変えていく。
成果が出ない人は、人を変えようとする。」
これは、心理学NLPのマスタートレーナーである足達大和氏の言葉です。
この言葉の通り、起きた出来事や結果に対して、まずは「自分に責任がなかったか?」と問うことが重要なのです。
その上で、フィードバックするポイントを明確にして指導してくれる上司は、部下から信頼されることは間違いありません。
2-4.失敗はない、ただフィードバックがあるだけ
マネジメントをする立場にある人は、「失敗はない、ただフィードバックがあるだけ」という考え方を持っておくことは非常に大切です。
なぜなら、部下のもつ「失敗への恐れ」や「制限」をゆるめてあげることができるからです。
それらをゆるめることで、部下は行動を起こしやすくなったり、物事へ果敢に挑戦することができるようになります。
また、部下も自ら望んで失敗をしているわけではありません。
ですので、上司が部下の失敗に対し、過度に責めたててしまうと、むしろ逆効果に働いてしまう可能性が高いと言えます。
大切なのは、「失敗そのものの責任は、上司である私が取るので、もっと果敢に挑戦しよう」という姿勢を見せていくことです。
そうすることで、長期的に見た時に部下は確実に成長していきますし、信頼関係も深まっていきます。
ここで勘違いしてはならないポイントは、「単に甘やかして許すのではない」ということです。
この考え方の本質となる目的は、次に繋がるような言葉かけをすること。
ですから、失敗そのものをなかったことにするわけではありません。
また、この考え方を部下やチームに浸透させることで、「一見、失敗にも見えるような経験や出来事からも、必ず何らかの学びを得ることができる」
という視点をチーム全体でもつことができるようになります。
2-5.相手の世界観を尊重する
「相手の世界観を尊重する」ことは、部下をマネジメントをする上で、非常に大切なポイントの一つです。
なぜなら、そもそもの前提として、人が持っている価値観や考え方はそれぞれ違うからです。
ここで大切となってくるのは、部下とのマネジメントで、一体どのようにして最適なアプローチを取るか、という部分です。
そこに役立つ考え方として、心理学NLPの「地図は領土ではない」という考え方をご紹介します。
これはシンプルに説明すると、同じ出来事でも、人によって捉え方や感じ方が異なる、ということです。
マネジメントをする時、このような前提を持っておくと、下記のようなメリットがあります。
- 物事が伝わらなくても、冷静に他のやり方を考えることができる
- どのようにすれば伝わるかを、試行錯誤することに意識を向けられる
自分が当然と思っていることは、相手にとっては当たり前ではない可能性があります。
伝わらないことへの不満や怒りに目を向けるのではなく、代替案や改善点の方に意識を向けたほうが、建設的にマネジメントを進めることができます。
人の数だけマネジメントの正解がありますから、
より良いマネジメントをしたいと思ったときは、「相手の世界観を尊重する」ことが大切です。
3.部下から信頼されるマネジメント法
さて、この章では、部下をマネジメントする際に、効果的な具体的な方法を2つ厳選してお伝えいたします。
3-1.部下が心を開く『傾聴法』
部下をマネジメントする上で、部下の意見や考えを知っておくことは非常に大切です。
部下が安心して、自身の考えを話したり、相談してもらえる関係性を築くことができるようになる、「傾聴」について詳しくお伝えしていきます。
「傾聴」とは、会話の内容だけを聞くのではなく、相手の気持ちに共感しながら話を聴く、というコミュニケーションスキルです。
部下とのコミュニケーションに傾聴を活用することで、下記のようなメリットがあります。
- 部下から深いところで信頼関係を築ける
- 自己開示してもらいやすくなる
(悩みを引き出せる) - 相談しやすい関係を作り、仕事の進みが早くなる
それでは、具体的に上司と部下とのコミュニケーションに、よくある事例をNG例とOK例に分けてご紹介いたします。
【NG例】
部下「◯◯さん、昨日に調査をご依頼をいただいていた件について、ご報告いたします。」
上司「あーあれね、▢▢でしょ?」
部下「はい。そうです。」
「ですので、、、」
(遮るように)
上司「じゃあ、A案というよりもB案だね。それでいこう。じゃあよろしく。」
部下「はい。わかりました。」
【OK例】
部下「◯◯さん、昨日に調査をご依頼をいただいていた件について、ご報告いたします。」
「そして調査した結果、▢▢ということがわかりました。」
上司「調査と報告ありがとう。
▢▢だったんだね。」
部下「はい。ですので、
A案で進めていくことが
可能だと思います。」
上司「なるほど。A案だね。
たしかに一見、
問題なさそうなんだけど、、、」
NG例では、部下の話を遮ってしまうどころか、自分の考えのみを判断材料として、結論を出してしまっています。
上司は経験や知識も豊富で、結論を出すことを急ぎたい気持ちも非常にわかるのですが、
このようなコミュニケーションを続けていると、部下からの信頼を得ることは難しくなってしまいます。
一方で、OK例では、部下の話をしっかりと最後まで聞いた上で、最終的な結論を一緒に出そうとしています。
こうすることで、部下からしても「この人は自分の話を、最後までしっかりと聞いてくれる」という印象を与えることができるので、
信頼関係を築きやすくなるのです。
それでは、傾聴の効果的な方法として、下記の3つのスキルをご紹介します。
傾聴スキル | 方法 |
---|---|
ミラーリング | 相手の姿勢や仕草などを合わせる(視覚的な情報) |
ペーシング | 相手の声のトーンやテンポ、音量などを合わせる(聴覚的な情報) |
バックトラッキング | 相手が使った言葉をそのまま繰り返したり、要約して相手に伝え、「話を理解している」ことを示す |
こういった手法を織り交ぜることで、より効果的に信頼関係を築き、コミュニケーションが円滑になっていきます。
これらの手法は、『脳と心の取扱説明書』と呼ばれる心理学NLPのスキルです。活用のコツや重要なポイントについては、下記の無料レポートがお役に立ちます。
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3-2.効果絶大!「褒める・叱る」の重要なコツ
実は、「褒める・叱る」ときに、あるシンプルなコツを押さえるだけで、部下からグッと信頼されます。
しかし、意外に意識されていないポイントです。
それは、実践心理学NLPの考え方の一つである、「ニューロ・ロジカル・レベル」に基づいて行うということです。
まずは、「褒め方・叱り方」についての重要なコツに大きく影響している、ニューロ・ロジカル・レベルについて簡単にご説明いたします。
ニューロ・ロジカル・レベルとは、人の意識や、成長、変容などを6つのレベルに分けて考えることです。
6つのレベルは、「環境」「行動」「能力」「信念・価値観」「自己認識」「スピリチュアル」を指します。
これらは、ピラミッド型で表されるのです。
ここで最も重要なのが、ピラミッドの上位にあたるレベルが、それよりも下位のレベルに大きな影響を与えるということです。
人は、自分がもっている「自己認識」から「信念・価値観」が作られます。
そして、それに沿った「能力」を磨いていき、「行動」として落とし込まれていきます。その「行動」が「環境」にも影響を与えるのです。
それでは、本題に戻ります。
部下を「褒める」、「叱る」時には下記のポイントを押さえることが非常に重要なのです。
- 「褒める」時には、上位のレベルで褒める
- 「叱る」時には、下位のレベルで叱る
なぜ、重要なのかということを、実際に「叱る」場面を例を挙げて、ご説明します。
例えば、部下が発注ミスをしてしまい、上司であるあなたは、叱って指導する必要がある場面を想像してみてください。
次のうち、どちらの叱り方がより適切だと思いますか?
「なぜ、発注ミスをしたの?だからあなた(自己認識)はダメだよね。」
「なぜ、発注ミスをしたの?発注ミス(行動)はダメなことだよね。」
いかがでしょうか?
①は、「自己認識」の部分を指摘しているので、部下は自分自身を否定された気持ちになることが想像できると思います。
逆に②では、「行動」の部分が良くなかったと伝えているので、部下は必要以上に傷ついたり、辛い思いをすることはありません。
ですので、しっかりと反省すべき「行動」にフォーカスして、次に活かすことができるのです。
次に、「褒める」場面を例に挙げて、ご説明いたします。
例えば、部下との面談で、優秀な働きぶりを見せてくれたことを褒める場面を想像してみてください。
①「あなたが取った積極的な行動(行動)は素晴らしい。」
②「あなた(自己認識)は積極的で、素晴らしい。」
いかがでしょうか。
「褒める」時には、②のように「自己認識」のレベルで褒めてもらえた方が嬉しいと思いませんか?
ですので、「褒める」時はより上位のレベルで部下に伝えてあげること、そして「叱る」時は、下位のレベルで指導してあげることがポイントです。
実践しやすく、効果も絶大な手法なので、ぜひ試してみてください。
最後に
いかがでしたでしょうか?
本記事では、部下をマネジメントする上で意外と陥ってしまう3つのミスをご紹介しました。
押さえておくべきポイントについて詳しく解説しました。
- 自分のやり方を押し付ける
- 部下の意見を否定する
- 叱るのではなく、怒る
さらに、これだけは押さえておきたい考え方と具体的なマネジメント法を7つご紹介しました。
- 愛をもって接する
- 根気をもって接する
- 相手の反応があなたのコミュニケーションの成果である
- 地図(マップ)は領土(テリトリー)ではない
- 相手の世界観を尊重する
- 部下が心を開く『傾聴法』
- 効果絶大!『褒める・叱る』の重要なコツ
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