もしあなたが、大事な会議をファシリテーターとして取りまとめ、結果を出すことができれば、社内での評価は上がり、一目置かれることは間違いありません。
一方で、ファシリテーターの基本的な知識やスキルを身につけていても、それだけでは足元をすくわれてしまうかもしれない、【落とし穴】があることをご存じでしょうか。
これを知らずにいると、場合によっては評判を落としてしまう、なんていうことにも・・・。
この記事では、「ファシリテーターとは何か?」といった基本的なことから、
会議やミーティングを進行してきてわかった、心理面での2つの落とし穴と、対策となる上級スキルについて、心理学NLPの視点からお伝えします。
知識として知っているだけでも差がつく内容となっています。
デキるファシリテーターとして認められたい方は、ぜひ押さえておくことをお勧めします。
すでにファシリテーターの基本については知っているという方は、2章の「【上級スキル】ファシリテーターが陥りがちな2つの落とし穴と対策」から読み進めてください。
目次
1.ファシリテーターとは
1-1.ファシリテーターとは
ファシリテーターとは、会議やミーティングを円滑に進めるための進行役で、目的やゴールの達成、より良い結論に到達するために誘導する役割を担います。
重要なことは、成果が最大になるように中立的な立場で働きかけること。
司会者とどう違うの?と思われるかもしれません。
司会は、会議等を順序通りに進める役割である一方、ファシリテーターは参加者からの発言を促し、意見まとめ、最終的に合意を得ることが求められます。
高いコミュニケーションスキルが欠かせない、重要な役割なのです。
1-2.ファシリテーターの役割と必要なスキル・能力
ファシリテーターには大きく分けて4つの役割があり、それぞれの役割を実行する上で必要となる基礎的なスキル・能力があります。
- プロセスをデザインする(組み立てる)
- 場を作る・コントロールする
- 意見・アイデアを引き出す
- 結論をまとめる
①プロセスをデザインする(組み立てる)
会議やミーティングがスムーズに進み、よい成果を作るためには事前準備が重要です。
スケジュール調整や当日の段取りを事前に連絡・共有します。資料の用意や事前の説明、また参加者の選定が必要となることもあります。
<必要なスキル・能力>
・構成力・スケジュール管理能力・資料作成力
②場を作る・コントロールする
会議中の働きとして参加者の発言を促し、円滑に進める必要があります。
発言しやすい雰囲気作り、出てきた意見は否定をせずに傾聴すること。また、違った方向に進みそうなときには積極的に介入して、場をコントロールします。新たな気づきを与えるための投げかけも行います。
<必要なスキル・能力>
・聴く力・観察力・コミュニケーション力
③意見・アイデアを整理する
最後の結論に導くために、参加者から出てきた意見やアイデアをまとめ、整理していきます。
議論が活発になり、意見やアイデアが多く出てくることは良いことですが、その結果、話しがまとまりづらくなることがあります。
そんな時は、ホワイトボードや付箋に書き、まとめることで、今何の議論を行っていてどこが問題なのか、ゴールまでの道筋を作っていきます。また、時間管理の意識を持つことも重要です。
<必要なスキル・能力>
・論理的思考力・時間管理能力
④結論をまとめる
議論の結果として、当初のゴールに沿った成果が必要となります。
ファシリテーター自身が決定や答えを出すのではなく、あくまでも参加メンバーが主体となります。客観的な立場で結論に導き、合意を形成していきます。
<必要なスキル・能力>
・客観力・統率力・課題遂行能力
2.【上級スキル】ファシリテーターが陥りがちな2つの落とし穴と対策
ファシリテーターには、目的やゴールに沿って会議中に結論を導き出す重要な役割があります。
そのため、時間内に結論をまとめようとするあまり、納得感や感情などのような「人の心理」を、つい軽視してしまうことも。
一見、会議はスムーズに進み、上手くまとまったように思える結論も、実は多くの人が納得していなかった、言いたいことが言えず不満が残った・・・なんていうことが起こっている可能性があります。
これが陥りがちな落とし穴の正体です。
そして、この落とし穴となる参加者の心理がこの2つ。
- 集団の心理
- 個人の心理
ここを押さえておかなければ、評価を上げるどころか、会議での決定が、後から覆ってしまう。非協力的なメンバーを生み出してしまう。
こうしたトラブルや不調和を招きかねません。
実際、参加者の心理面まで考慮した上で、状況に合わせてファシリテートができている人は一握りではないでしょうか。ぜひ、ここを押さえて周りに差をつけていきましょう。
陥りがちな2つの落とし穴と、その回避策、対策としての上級スキルをお伝えしていきます。
2-1.集団の心理による落とし穴
まず1つ目の「集団の心理」について。
大人数で議論して意思決定をする場合、集団の心理が働きます。
1人だけでは考えつかないようなアイデアが生れたり、到達できなかった結論に行きつくことができる。それがチームダイナミクスの醍醐味でもあります。
一方で、一人一人は非常に優秀であるはずの人たちが、集団になるとマイナスの方向に作用して、思ってもいない判断を下し、意図しない結論になってしまうことが起こります。
これは、アメリカの社会心理学者アーヴィング・ジャニスが提唱した概念である集団思考・集団浅慮(グループシンク)によるものと言われています。
集団の心理によって起こる現象と、その対策を見ていきましょう。
2-1-1.社会的手抜き
参加人数が多くなってくると何もしなくなる、いわゆる手抜きをする参加者がでてきます。
心理学者のリンゲルマンも、共同作業の際に無意識に手を抜いてしまうことをリンゲルマン効果と提唱しています。
- 「自分くらい意見をださなくても問題ないだろう」
- 「誰かがやってくれるだろう」
<回避・対策>
- 声をかける
- 役割を決める
例)
- 全体を観察し、発言をしていない人、気になる人がいたら適度に声がけする。
- ロールプレーを行いお客様役をやってもらう。
2-1-2.感情的な対立
日頃からグループや部署、派閥間での対立がある場合、参加者の間で、建設的ではない意見の対立や、感情的な言い争いへと発展しまうことがあります。
そのまま嫌な雰囲気が続いてしまうと、最終的には仲間割れの状態になってしまい結論に至らなくなってしまう可能性もあります。
- 「あのグループの意見には納得するわけにはいかない」
- 「あの人達はいつも自分に都合のよい意見ばかりだから賛成しない」
<回避・対策>
- 休憩を挟み、場の緊張をほぐす
- 人対人ではなく、意見やアイデアの対立に持っていく
例)
- 一旦休憩をとったあとにアイスブレイクを行う
- 論点を整理してホワイトボードなどに書き出す
- 対面ではなくホワイトボードに向かい議論を行う
2-1-3.声高少数者の影響
声の大きい人、知識のあるベテランの意見で決まってしまうことが起こります。これが続くと、他の参加者は意見を出さなくなる上、思考を停止してしまうことにもなりかねません。
- 「いろいろ知ってるから、あの人の意見でいいんじゃないかな」
- 「上司の意見だから賛成しておこう」
<回避・対策>
- 意見を出しやすくする
- 課題解決のフレームワークを使う
例)
- アイデアや意見をポストイットに書き出してもらう
- 意見がでにくいときには、ボール(クーシュボール)を使い次に発言して欲しい人に投げる
- ロジカル・シンキング(論理的思考)のフレームワークで解決する
※フレームワーク・・・経営戦略や問題解決、業務改善などの場面で、課題解決や分析、意思決定を行うための思考の枠組み分析のツールのこと
ロジカルシンキングの記事はこちらから
【分かりやすい】ロジカル・シンキングとは?身につける方法&おすすめ入門書
2-1-4.集団圧力・同調行動・集団浅慮
見えない圧力やルール、枠組みによって、知らずのうちに同調してしまうことがあります。何も対策を取らないと、マイナスに作用し、好ましくない結論を出してしまうことになってしまいます。
- 「会社のルールは変えられないから、それでいいや」
- 「みんなが賛成しているから、それがいいんだろう」
<回避・対策>
- 社外の人をメンバーにいれる
- ルールを決める
- フレームワークを活用する
例)
- 協力会社やパートナー、コンサルタントなど外部の方に参加してもらう
- オズボーンのチェックリスト法 9つの視点で考えてみる
(転用、応用、変更、拡大、縮小、代用、置換、逆転、結合) - 会議を行う前にグランドルールを決め、その中に盛り込む
参考文献:
『グループ・ダイナミックス –集団と群集の心理学』 (釘原直樹 有斐閣)
『ファシリテーターの道具箱』 (森 時彦 ダイヤモンド社)
2-2.個人の心理による落とし穴
2つ目の「個人の心理」について。
集団は個人の集まりであるため、各個人の心理も働きます。
個人の心理を考慮せずに進行してしまうことで、参加者に無意識の抵抗がおき、会議がスムーズに進まないばかりか、違和感や不一致感を持ったまま結論に達してしてしまうことが起こります。
これは心理面の理解が足らず、各個人の特性や思考・行動パターンに合わせたコミュニケーションが取れていないことによるもの。
個人の心理によって起こる現象と、その対策を見ていきましょう。
2-2-1.意見がでてこない
ファシリテーターが参加者とコミュニケーションが上手くとれず、信頼関係が築けていない、・・・こうした状況では、参加者は安心して意見を言える状態にならず、発言を控えてしまいます。
- 「意見を聞いてくれてるのかな?」
- 「なんか話しづらいから意見を言うのは止めよう」
<回避・対策>
- 言語、非言語のコミュニケーションスキルを活用する
信頼関係を築く上で重要な親近感・安心感・信頼感を与えるため、言語(言葉)での「バックトラッキング」、非言語の「ミラーリング」「ペーシング」を行なっていきます。
相手が話した言葉を繰り返すバックトラッキング(オウム返し)を行うことで、人は自分の話を聞いてもらえていると感じ、安心感や信頼感が生れ、意欲的に話をしてくれるようになります。
また、コミュニケーションは言葉(言語)だけで行っているように思いがちですが、実は言葉以外の「非言語」でのコミュニケーションが重要だと言われています。
人は自分と似たものや共通点があるものに対して、親近感や安心感を抱くという心理の働きがあります。
相手の姿勢や身体の動きを合わせるミラーリング、声の大きさやトーン、速さなどを合わせるペーシングといった「非言語」でのコミュニケーションを行うことで、さらに話を引き出しやすい状況を作ることができるのです。
例)
バックトラッキング |
「メンバーのスキルを上げる必要があると思う」という意見が出た場合、いきなり、どうしてそう思うのかを尋ねるのではなく、「メンバーのスキルを上げる必要があるとお考えなんですね」と同じ言葉を返してから、こちらの話をしていきます。 |
ミラーリング・ペーシング |
発言している人が前傾姿勢で早口で話をされているときは、こちらも同じように前傾姿勢の早口で応えます。もし腕組みをしてゆっくり話されている方には、腕は組まなくても手を組むなど、同じような姿勢でゆっくり応えます。 |
2-2-2.納得してもらえない
ファシリテーターの声がけが適切でないと、話が嚙み合わず不一致感が生じ、心の奥で同意を得られないまま、会議が進んでしまうことがあります。
- 「ちょっとニュアンスが違うんだよな」
- 「ファシリテーターに話が伝わってないかも」
<回避・対策>
人は五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を使って情報を得ています。そしてコミュニケーションにおいて、人それぞれ得意とする感覚に違いがあります。
その得意とする感覚に合わせた声がけを行うことで一致感が生まれ、納得してもらいやすくなります。
反対に、自分が得意ではない感覚でコミュニケーションが続くと、少しずつズレが生まれていくことになってしまいます。
例えば、
「意見がよくわからない」というときの、それぞれの表現の例と特徴は以下のようになります。
●視覚優位の人 | |
---|---|
表現例 | 「話しが見えない」「話の焦点がぼやけている」 |
特徴 | 論理的に捉える。耳やあごに手を触れることが多い。 |
●聴覚優位の人 | |
---|---|
表現例 | 「何を言っているかわからない」「話がガチャガチャしている」 |
特徴 | 論理的に捉える。耳やあごに手を触れることが多い。 |
●体感覚(触覚。嗅覚、味覚)の人 | |
---|---|
表現例 | 「話が掴めない」「飲み込めない」 |
特徴 | じっくり感じて話すため、比較的ゆったりとしたテンポで話す。 |
こうした表現や特徴から優位な感覚を見つけ出し、その感覚に合わせた声がけをすることで無意識レベルで同調や共感が生まれ、信頼関係を築いていくことができます。
先程のバックトラッキングと合わせて使うことでより親近感や安心感が生れます。
例)
全体に話す場合でも、「視覚」「聴覚」「体感覚」の表現を含めて使うことで、より多くの人に納得感を与え、理解をしてもらいやすくなります。
(例)
2-2-3.話が「削除」「一般化」「歪曲」される
ファシリテーターの受け答えによっては、発言した人の話や意見が不十分なまま伝わってしまうことがあります。すると、人によって違う受け取り方をしたり、会議の方向性がズレていきかねません。
- 「言ったことはそうじゃないんだよな」
- 「あれ、出てきた意見と違う話の流れになってる」
<回避・対策>
人は脳の中にある情報を言葉で伝えるときに「削除」「一般化」「歪曲」を行います。
削除 | 自分の関心感心のある情報を優先的に選択 |
一般化 | 経験をパターン化して、すべてに当てはめる |
歪曲 | 自分の都合のいいように意味づけ・解釈を行う |
例えば、私たちは日常的に「みんな言っています」などのように曖昧な表現を使うことがありますが、ここには正確な情報が「削除」されています。
「みんな」とは何名中何名のことなのかなど、適切な質問によって情報を回復し、明確にしていきます。
この質問をする際に気をつけたいのが、信頼関係が築けているかどうか。
信頼関係ができていない状態で質問を行なっていくと、内容によっては尋問のようになってしまう可能性があります。バックトラッキング、ミラーリング、ペーシングなどを使い、信頼関係を築いた状態であることが大前提です。
例)
2-2-4.モチベーションが上がらない
参加者が毎回モチベーション高く会議に参加してくれるとは限りません。モチベーションが上がらずに、やる気が下がった会議は生産性も低く、結論もパッとしないものとなってしまいます。
- 「目標達成、目標達成って、なんかモチベーションが上がらないな」
- 「とにかく進めましょうって、まず考える必要があるんじゃないかな」
<回避・対策>
人はそれぞれ無意識的に自分の得意なパターンにあわせて行動しています。
人が使う言葉から思考や行動パターンを分析し、影響力を持つ言葉を自在に使うことができる、言葉で人の心を動かすLAB(ラブ)プロファイルというスキルがあります。
それぞれのメンバーの特性に合わせた動機付けの言葉を使うことで、モチベーションを上げていきます。
例)
会議の参加者にはどちらのパターンもいる可能性が高くなります。そんなときは、どちらにも響く言葉がけを行います。
例)
NLP引用・参照元
NLP-JAPAN ラーニング・センター主催
・NLPプラクティショナーテキスト
・NLPマスタープラクティショナーテキスト
・NLPプロフェッショナルコーチ認定コーステキスト
3.まとめ
ファシリテーターには、その場、その時、その人に応じて柔軟な思考と対応スキルが必要です。
それはおそらくあなたが思っている以上に・・。
私が経験した失敗談をお伝えすると、
順調に進んでいたミーティングが、急に年長者の方がご自身の意見を主張しだし、聞く耳を持たなくなってしまうことがありました。
たった5名のミーティングでのことです。
他の参加者も気まずくなって、結局のところその場での決定は持ち越しに。 忙しいメンバーを揃えることから仕切り直しし、年長者の方へは「何が急にそうさせてしまったのか?」を個別に伺う機会を設ける必要がありました。
たった5名でさえ、立場や役職が違ったり、利害関係がある場合は話が進まなくなってしまうのだと、大きく反省した経験です。
ファシリテーターには、関係性を円滑に保ちつつ、物ごとを進めたり問題解決する力が必要です。『究極の対人スキル』とも言えるかもしれません。
私の場合は心理学 を学んで、
人の心理状態を読み取れるようになることや、心理状態をコントロールできるようになる必要があるのだと気づきました。そしてスキルを駆使しながら、経験値と共に実力が伴うようになっていきます。
より重要な会議や決定の場を取りまとめられるようになる能力は、会社やビジネスにとって素晴らしい財産です。身につけて損は一切ありませんし、あなたの仕事で必ず活きてくるでしょう。
オススメします!