アルフレッド・アドラーは
オーストリアで生まれた人物で、
フロイトやユングと並び
【心理学の三大巨匠】と称される
心理学者の1人です。
最近ではアドラー心理学の
内容を扱った、
『嫌われる勇気』
という書籍が話題となりました。
2017年には
ドラマ化されていたため、
記憶に新しいという方も
多いのではないでしょうか。
この記事では、
アドラーがどのようにして
多くの人から支持されている
アドラー心理学を創り上げたのか、
その生涯を紐解きつつ、
新たに心理学を学ぶための
ポイントをお伝えしていきます。
目次
1.アドラーの生涯
まず第1章では、心理学を志すきっかけとなった出来事から、フロイトとの出会い、そして決別、その後の晩年まで、アドラーの生涯について紐解いて行きます。
1-1.幼少期
アドラーは1870年に6人兄弟の2番目として、オーストリアで穀物商を営む、比較的裕福なユダヤ教の家庭に生まれました。
幼少期には、くる病を患っており、とても健康とは言えない病弱な子どもで、5歳の時には肺炎にかかり生死の境を彷徨ったこともありました。
アドラー自身は当時病弱ゆえに、母親との関係が上手くいっていなかったとも感じており、その一方で父親との関係は良好であったと自伝にて明らかにしています。
このような親子間の関係は、後のフロイトの提唱するエディプス・コンプレックス(男児が母親に惹かれ、父親をライバル視すること)は、
必ずしも当てはまるものではないと考え、フロイトとの意見の相違の一端となりました。
また3歳年下の弟も、1歳という若さでジフテリアで亡くなっており、前述した通りアドラー自身が病弱であったこともあいまってアドラーは医師を目指したと言われています。
アドラーは10歳のころギムナジウム(11歳から18歳までが通うヨーロッパの中等教育施設)に入学しますが、数学が苦手で成績はあまり芳しくありませんでした。
父親から靴屋の徒弟にするという脅しもあり、その後勉学に励んだアドラーは、ウィーン大学で医学の学位を取得しました。
大学在学中は精神科の科目は必須ではなかったこともあり、精神科に関する特別な勉強はしておらず、最初は眼科、後に内科の診療所を開業しました。
1-2.父親としてのアドラー
アドラーは大学を卒業した2年後にライサ・エプシュティンという女性と結婚しました。
結婚した後、アドラーは開業医として朝から晩まで休みなく働くようになり、そして夜は友人と出かけていくため、妻のライサは家事と育児を1人でこなさなくてはいけなくなりました。
当時のウィーンでは、男性が外で働き、女性が家事をするのが一般的でした。
しかし、2人は社会主義の勉強会で知り合ったということもあり、ライサ自身も外に出て活動するとこを望んでいたため、アドラーの多忙はあまり歓迎されなかったようです。
実際のアドラーの子どもである、アレクサンドラとクルドは、子どもたちにとっては良い父だったと評価しています。
具体的には、父と客人の議論の場に子どもが同席することが許されていたこと、次の日の学校に間に合うのであれば、いつ寝ても良いと言われていたことが良き父親たる由縁だったようです。
詳しくは第2章で説明しますが、子育てに関するこのような考え方は、後にアドラーが提唱したアドラー心理学の【ヨコの関係】や【課題の分離】といった特徴に現れています。
1-3.心理学との出会い
自身が開業した診療所には、近くに遊園地があったため遊園地で働く曲芸師やピエロ、大道芸人などの自分の身一つで生計を立てる人が多くやって来ました。
彼らの話から自分の身体に問題を抱えつつも、それを努力によって克服している人が多くいることを知ります。
このような気付きから、その後提唱することとなる、概念に関するヒントを得たと言われています。
そして1902年からは、フロイトの家で行われた水曜日の研究会の一員となり、精神分析会の立ち上げにも関与しました。
よく誤解されるポイントでもありますが、アドラーはフロイトの弟子ではありません。
アドラーとフロイトは比較的年齢が近かったこともあり、いわば同僚という関係性でフロイトの主宰する精神分析協会に所属し、その中核メンバーとして活動していました。
しかし、先に述べたエディプス・コンプレックスへの考え方の違いなど、学説上の対立や方向性の相違からアドラーとフロイトは次第に距離が生まれていきました。
最終的にはフロイトと完全に決別して独自に【個人心理学】を提唱するに至りました。
その後、1911年には自由精神分析研究会を設立し、翌年には個人心理学会を設立しました。
1-4.晩年
1916年には第一次世界大戦に従軍し、軍医として精神疾患患者の診察を行いました。
この経験から【共同体感覚】に関するヒントを得たと言われています。
アドラーはアメリカで講演家として人気を誇り、多忙な日々を送りました。
自身が65歳となる1935年にはアメリカに移住し、各地を飛び回る生活を続けていましたが、1937年講演を行うために訪れたスコットランドで心臓発作で倒れ、67歳で息を引き取りました。
2.アドラーの考え方の特徴4選
第1章で扱った通り、アドラーはフロイトと決別をした結果、個人心理学と呼ばれる独自の心理学を提唱しました。
この個人心理学は一般的にアドラー心理学とも呼ばれています。
アドラー心理学からわかる、アドラーの考え方の特徴とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
アドラー心理学では世界はどこまでもシンプルであるという前提に基づき、世界を複雑にしているのは自分自身であると考えます。
世界はシンプルであると言われて共感できる人はそう多くないかもれません。
アドラーは、このようにとらえられない原因は自分にあると理解はできても、共感できない理由として自分が主観から脱する勇気がないためであると考えていました。
これらのことを前提としてアドラーの考えた心理学の特徴をみていきましょう。
アドラー心理学には次のような特徴があります。
- 【目的論】
- 【ヨコの関係】
- 【課題の分離】
- 【共同体感覚】
この4つの特徴についてご説明します。
2-1.目的論
アドラー心理学の代表的な特徴として挙げられるのが目的論です。
フロイトは「過去が原因で今がある」と考える原因論を唱えました。
アドラーはこれと反対に、問題の原因は、今のままでいることが自分にとって楽だから行動を変えず、その理由を過去のせいにしていると考えます。
アドラーは、目的を達成するためには何か行動を起こし変化する必要があるが、行動を起こす時には様々なエネルギーが必要であることを指摘しています。
そのため、変化しない理由を過去に探して現状のままでいるほうが楽であり、多くの人はこれに甘んじて生活をしていると主張するのです。
そして、アドラーはこの変化しないための理由として探し出したものと、行動に移せないことには、因果関係は存在しないと考えます。
行動を起こせない理由として原因を探し、その原因のために行動を起こすことができないのだと言い訳をしているのであるととらえているのです。
例えば、自立をするために一人暮らしをしようと考えていても、自分は家事が苦手だし、料理もできないから一人暮らしはできないと主張している人がいるとします。
しかし、実際には家事が苦手でも、料理ができなくても、一人暮らしをしている人はたくさんいます。
つまりは、自分がしなくても親が家事や料理をしてくれる実家という存在に甘え、一人暮らしをしない言い訳をしているのです。
アドラーは次のような名言を残しています。
「性格は死の1日前まで変えられる。」
「人間はライフスタイルの捕虜である。」
引用:和田秀樹 『アドラー100の言葉』2016年、宝島社)
アドラーは人間の性格をライフスタイルと呼び、死ぬ1日前まで変えられるとしながらも、変わりにくいということを認識していました。
まずはこのことを自覚し、何らかの行動を起こして行くことが必要なのです。
2-2.ヨコの関係
アドラーは、全ての人間関係は対等であると考えます。
具体的にいうと親と子、上司と部下など肩書きに違いはありつつも、上からタテに並んだような関係性ではなく、皆がヨコ並びであると考えているのです。
例えば親子という関係性に着目してみると「勉強しなさい」と親に言われて、うんざりした経験のある人も多いでしょう。
このように、子どもが自分の思い通りに動くように積極的に干渉していくことは、アドラーの言うタテの関係性を築いているということです。
できるだけ子供のやりたいようにさせることを前提として、ただ放任主義を貫くのではなく、
子供に目標ができた時に、それを手助けするための備えがあるということを示す、これがアドラーの考える親子関係における理想的なヨコの関係性です。
さらにこのヨコの関係性を保つために重要なポイントとして、アドラーは褒めるという行為を否定します。
褒めるという行為は、上の立場の人から下の立場の人に向けて行うものであるとして、褒めること=タテの関係性を築いているという証拠であるというのです。
「褒めない子育て」と聞くと違和感を感じる方も多くいると思いますが、アドラーは「褒めない子育て」は可能であると主張します。
では、具体的にどのように褒めない子育てを行うのでしょうか?
答えは簡単です。褒めるのではなく感謝を伝えるのです。
例えば、子どもが何かお手伝いをしてくれた時には「えらいね」と褒めるのではなく、「ありがとう、助かったよ。」と伝えるようにしましょう。
褒める子育てを行うと、子どもは「褒められること」が目的となります。
つまり誰かに認められないと、この目的は達成されないのです。
アドラーは人間の悩みの全ては人間関係であるとし、人間が一人だけであれば悩みは無くなるとまで言い切っています。
幼少期からタテの環境で育ち、褒められることを目標として成長すると、
常に誰かの目を気にして誰かに褒められないと、認められていると感じることができなくなってしまいます。
誰かにほめてもらわなくても自己を肯定できる人になるためには、ヨコの関係性を築いていくことが不可欠です。
アドラーは次のような名言を残しています。
「誰かが始めなければならない。見返りも承認も求めずに、あなたが始めるべきなのだ。」
引用:和田秀樹 『アドラー100の言葉』2016年、宝島社)
見返りも承認も求めないヨコの関係を築くのは、誰かではなくあなたです。
誰かがヨコの関係性を実現してくれるのではなく、あなた自身が周りの人とヨコの関係を築いていくのだという意識がないと、何も変わらないないのです。
2-3.課題の分離
例えば、あなたがこまめにに職場で掃除をしていたとして、いつも汚くするのは同じ人だったりしませんか。
その時あなたは「せっかくきれいにしてあげたのだから、きれいに保ってほしい」と考えていませんか?
アドラーは「何かをしてあげたから見返りを求める」という行為を否定します。
あなたが職場をきれいにするのはあなた自信の課題であり、相手がそれをどう受け取るかは相手次第なのです。
あなたがどれだけ「…してあげた」と感じていても相手がそれをどう感じているかはその人次第であり、それは「相手の課題」のなのです。
あなたの職場を清潔に保ちたいという自分の課題とは別問題であると考えなくてはいけません。
自分以外の人は結局は他人であり、決してあなたの力で変化を生み出すことはできません。
これは親子や夫婦ほど近い関係であっても例外ではありません。
人が直接的に影響を及ぼし、変化させることができるのはあなた自身だけなのです。
相手が変化するようにと期待してアプローチするよりも、自分を変えていくべきなのです。
他者の課題には介入しない姿勢、そして自分の課題には他の誰一人として介入させないという意識が大切です。
アドラーは次のような言葉を残しています
「馬を水飲み場へ連れて行くことはできる。しかし、馬に水を飲ませることはできない。」
引用:和田秀樹 『アドラー100の言葉』2016年、宝島社)
誰かが変わるように働きかけることや、環境を整えることはできても、実際に変化するためには当事者が行動する必要があるのです。
あなたの力で変化させることができるのは、誰かではなくあなた自身だけなのです。
2-4.共同体感覚
『嫌われる勇気』の中で、一つ前の「課題の分離」は人間関係のスタートであると述べていて、共同体感覚はその反対に、人間関係のゴールであると述べられています。
共同体感覚とは、自分は共同体の一部であるということを自覚した上で、自分は主人公ではないという前提にたち、共同体の一員として自分の所属する共同体に貢献するという実感を持つことです。
つまり2つ前で説明したように「褒められること」を目的として生活するのではなく、貢献しているという実感を得ることを目的とするということです。
ここで大切なことは、自分が貢献したという事実から喜びを感じるということです。
誰かに褒めてもらって貢献したことを実感するのではありません。
あなたがこのような感覚を手に入れることができれば、アドラーが全ての悩みになると主張した人間関係から開放されることになります。
他人の目を気にして「自分がどう思われているか」ということに目を向けるのではなく、他人に関心を持つことで貢献しているという実感につながるのです。
アドラーは次のような言葉を残しています。
「社会全般の幸福に貢献しなかった人はどうなったか、何も残すことなく消え去った。身体も精神も何もかも。」
引用:和田秀樹 『アドラー100の言葉』2016年、宝島社)
貢献したという事実は形として残ります。
逆に言えば貢献しなかった人のことは、何一つ残ることはないのです。
あなたがもし何かをなしとげたいと思うのなら、あなたの属する共同体に、どう貢献していくことができるのか今一度考えてみましょう。
3.アドラー心理学をもっと詳しく知るために
アドラー心理学をもっと詳しく知るためには、いくつかの方法があります。
この記事を読んで、アドラー心理学がどのような学問なのかその内容をもっと知りたいと感じた方はまずはこちらの記事を読んでみてください。
こちらの記事ではアドラー心理学について、よりわかりやすく説明しています。
アドラー心理学とは?幸福に生きるための「考え方」をわかりやすく解説
そしてアドラー心理学を学んでみたいと感じている方は、アドラー心理学に関する本を読んで見るのもひとつの方法です。
おすすめの書籍をまとめたページが下記にあるので、ぜひ参考に本を選んでみてください。
アドラー心理学おすすめ本ランキング15選!ぜひとも読みたい必須本を厳選
また更に深く心理学を学んでみたいと感じた方は【心理学NLP】を学んでみませんか。
心理学NLPとは、普通の心理学のように統計学的に人をタイプ分けしていくのではなく、アドラー心理学と同じように個人に目を向けて、自分がどうなりたいのかということに着目した心理学です。
また、心理学NLPはアドラー心理学の以外にも様々な心理学のエッセンスを取り込んだ心理学です。
アドラーは人間関係が全ての悩みの元であると述べています。
人間関係の問題を解消したり、自分の内面を変え、自分に対する自信を高める学びを求めている方は、近年増えてきています。
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